『ターミネーター2』に『ウォーリー』、『野生の島のロズ』まで!ロボットやAIに芽生える“心”を描いた感涙必至の映画たち

コラム

『ターミネーター2』に『ウォーリー』、『野生の島のロズ』まで!ロボットやAIに芽生える“心”を描いた感涙必至の映画たち

子育てに挑むロボットのなかでプログラムを超えた“特別ななにか”が芽生える『野生の島のロズ』

アメリカの作家ピーター・ブラウンの児童文学「野生のロボット」を、『リロ&スティッチ』(02)のクリス・サンダースが監督と脚本を手掛けて映画化した新作アニメーション『野生の島のロズ』。嵐の夜、梱包の箱ごと無人島に漂着してしまった新品のロボットが、過酷な大自然のなかで生き抜くために、野生動物たちからサバイバル術を学んでいく。

雁の卵からひな鳥を孵し、キラリと名付け育て始めるロズ(『野生の島のロズ』)
雁の卵からひな鳥を孵し、キラリと名付け育て始めるロズ(『野生の島のロズ』)[c]2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.

未来的な都市生活に合わせ、人間用にプログラミングされた最新型アシスト・ロボット、通称ロズ(声:綾瀬はるか)にとって、人間のいない野生の島は未知の世界。まずはロズが自らの学習機能を駆使して、島に生息する野生動物たちの言語をマスターするという展開がユニークだ。さらに、ロズは親を亡くした雁の卵を見つけ、孵ったひな鳥の母親代わりをすることになる。

キラリに飛び方を教えようとするロズ(『野生の島のロズ』)
キラリに飛び方を教えようとするロズ(『野生の島のロズ』)[c]2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.

雁のひな鳥をキラリ(声:鈴木福)と名付け、一人前の渡り鳥になるまで育て上げることを、あくまでも“任務”として捉えていたはずのロズ。だが、無邪気なキラリに「ママ!」と呼ばれ、その成長を見守るうちに、ロズの体の奥でたしかに“特別ななにか”が生まれ始める。食べる、泳ぐ、飛ぶといったサバイバルスキルをキラリに身につけさせるため、なりふり構わず子育てに孤軍奮闘するロズのひたむきな行動は、まさに髪を振り乱しながら必死に子育てをする人間の母親そのもの。いかにもハイテクロボット的なクールなビジュアルに反し、泥臭くも人間味があふれているロズの姿に、感情移入せずにはいられない。

ロズを警戒していた動物たちも彼女を仲間として受け入れていく(『野生の島のロズ』)
ロズを警戒していた動物たちも彼女を仲間として受け入れていく(『野生の島のロズ』)[c]2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.

ロズが観察し、学習した対象が、厳しい自然環境の下、子孫を残すために本能に従って生きる野生動物たちだったことも、本来、無機質な存在のロズが“母性的ななにか”を持つようになった理由として説得力がある重要なポイント。当初はロズを異物扱いしていた動物たちが、ロズが子育てをする様子を見て、少しずつ心を開いていく過程にもグッとくる。ロズとキラリの深い親子愛に泣けるだけでなく、疑似家族、他者との共生、自然とテクノロジーの関係など、普遍的かつ現代的な数々のテーマを内包した世界観も本作の大きな魅力だ。


種族の違いを乗り越えて大きな困難に立ち向かう(『野生の島のロズ』)
種族の違いを乗り越えて大きな困難に立ち向かう(『野生の島のロズ』)[c]2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.

生まれたばかりの人間の赤ちゃんが、周囲の人との交流を通して“人間らしい感情”を学んでいくように、いつか、高度な学習機能を備えたロボットが“感情”を持てるようになる日が来ても不思議ではない。リアルとSFの世界の境界線が交じりつつある現在、心を持つロボットのエモーショナルな物語は、人間にとって大事なものを改めて気づかせてくれるはず!

文/石塚圭子

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