大林宣彦監督「自由の尊さ」を熱弁。常盤貴子は「なんてやんちゃな監督!」と驚き
第30回東京国際映画祭Japan Now部門『花筐/HANAGATAMI』(12月16日公開)の舞台挨拶が10月28日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで開催され、肺がんを公表している大林宣彦監督が、杖をついて登壇。「今こそ、自由というものの尊さを表現したい」と本作に込めた思いを力強く語った。
本作は、大林監督が長編デビュー作『HOUSE/ハウス』(77)より以前に書き上げていた脚本を映画化したもの。1941年の佐賀県唐津市を舞台に、戦禍の中に生きる若者たちの凄まじい青春群像劇を、圧倒的な映像力で綴る。この日は窪塚俊介、長塚圭史、矢作穂香、山崎紘菜、常盤貴子、村田雄浩、岡本太陽も登壇した。
大林監督は「敗戦孤児の世代」といい、「何か作らなきゃいけないと、今まで誰もやらなかったことをやりながら生きてきた。一生アマチュアとして、自分の個人誌のような、日記のような映画を弱者の立場から作ってきた」と自身のスタンスを語る。
檀一雄による同名短編小説を映画化した本作。常盤は「原作は短編。それが大林監督の脳内のフィルターを通すと、“純文学ってここまで行間が広がるんだ”と思った」と大林監督の感性に驚くことしきり。「完成した映画を観ても、なんてやんちゃな監督なんだと思って。こんなに自由に広げてくる監督って、世界に今までいたのかな?と思うくらい。自由、やんちゃ、好き放題!」と監督の広げた“映画の可能性”に感激したそう。
窪塚や長塚が16歳の役を演じるなど、キャスティングに関しても自由度が発揮された。大林監督は「自由に遊べることが、子どもであることの一番の証。そういうことを題材にしている」と解説し、「戦争が終わった後、せめて自分が平和に役立つとするならば、自分が信じる映画くらいは自由に作らせてほしい。そう思って自由に映画を作らせていただいた」と映画に込めたのは、“自由“への思いだと語る。
さらに「どうもそういう映画がまた作れなくなるんじゃないかと怯えている」と危惧する大林監督。「3年後にこの映画を作るのことが許されるのか。今こそ自由というものの尊さを表現したいと思い、こしらえたのがこの映画」と力を込めていた。【取材・文/成田おり枝】