<訃報>樹木希林さん75歳、日本中に笑顔と感動を与えた名女優
日本の映画界・テレビドラマ界にその名を刻む女優・樹木希林が9月15日に都内の自宅で亡くなったことが明らかになった。75歳だった。
13年に発表された第36回日本アカデミー賞の授賞式において、原田眞人監督の『わが母の記』(12)で最優秀主演女優賞を受賞した際に、全身にがんが転移していることを公表。その後も映画を中心に女優としての活動を続けていた。
43年に現在の東京都千代田区で生まれた樹木は、61年に文学座付属演劇研究所に入所。その後さまざまなテレビドラマに出演し「寺内貫太郎一家」や「ムー」などの代表作を得る。映画界では66年に公開された『殿方御用心』を皮切りに、国民的シリーズの3作目『男はつらいよ フーテンの寅』(70)や勝新太郎の代表シリーズの最終作『悪名縄張荒らし』(74)などでキャリアを積む。
これまで日本アカデミー賞では『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(07)、『わが母の記』で最優秀主演女優賞を、『悪人』(10)で最優秀助演女優賞を獲得したほか、6度の優秀賞を受賞。実写映画からアニメーションやドキュメンタリー作品など幅広く、のべ100作品以上に出演してきた。
今年公開された『万引き家族』(18)では一家の祖母・初枝役を演じ大きな注目を集め、同作は第71回カンヌ国際映画祭の最高賞にあたるパルムドールを受賞。また長年憧れていたという文学座の先輩俳優・山崎努と夫婦役で共演した『モリのいる場所』(18)も5月に公開。7月にアメリカで行われた第12回ジャパン・カッツでは、国際的に活躍する俳優に送られるカット・アバブ賞を獲得したばかりだった。
先月13日に左大腿骨を骨折し緊急手術を行い、一時は危篤状態であったとのこと。今月4日に行われた、出演最新作『日日是好日』(10月13日公開)のプレミア試写会は、療養中のため欠席していた。
個性的な演技と、その独特の存在感、歯に衣着せぬ発言で日本中に笑顔を与えてくれた樹木。不思議なオーラで強烈なインパクトを残した『ピストルオペラ』(01)や『Returner リターナー』(02)での好演、そして何と言っても忘れ難いのは河瀬直美監督の『あん』(15)でハンセン病を患った老婆を丁寧に演じあげたその姿。
日本中に笑顔と感動を与えた名女優に、心よりご冥福をお祈りいたします。
文/久保田 和馬