『心中天使』初日挨拶で郭智博が「透明で温かい作品」とアピール
若者たちの行き場のない思いが周囲を変えていく姿を描く『心中天使』(公開中)の初日舞台挨拶が2月5日、渋谷ユーロスペースで行われ、出演者の尾野真千子、郭智博、桜井ひかり、一尾直樹監督が登壇した。
全く別々に生きる3人の男女の心の中が、やがてシンクロしていくという神秘的なストーリーの本作。主演を務めた尾野は「できあがった映画を見ると、幼い頃『今いる自分が、もしかしたらいないのかもしれない』と思った気持ちを思い出しました。見終わった後に感じたことを話し合ってください。環境によって感じ方が違ってくるはずだと思うので、たとえば年齢の離れた人と見に行って、話し合ったり語り合ったりしてください」と呼びかけた。会社員のユウを演じた郭は、自身の役柄について「僕は役作りをしないのですが、人に『孤独っぽい』と言われるので、それが役とリンクしているのかなと思います」と分析し、今作を「今、原作ものの映画が多い中で、オリジナル脚本の『心中天使』が公開できたことに意味があると思います。透明で温かい作品です」と紹介した。桜井は撮影を振り返り、「自分がちゃんとついて行けるか不安でしたが、共演者の方々に助けていただいて安心して演技ができました」と周囲に感謝し、「ケイと自分とは性格は違うけれど、『なんで自分はここにいるんだろう』『前は何だったんだろう』と考えることが多いので、この映画が持っているテーマが自分の中にもあるのかなと思います」と自身の考えを述べた。
劇場デビュー作『溺れる人』(02)を今回の舞台挨拶場所と同じ場で上映していた一尾監督は「(『溺れる人』の)その後、自分の感じたことや体験を元にできあがったのがこの『心中天使』です。僕は名古屋を拠点に活動していて、この作品のために地元のたくさんの方々の応援をいただきました。はっきり言って、登場する人物に感情移入する映画ではありません。自分の個人的な体験や気持ちを、この映画と照らし合わせて見てほしいと思います」と、自分なりの見方を話した。
また、尾野演じるピアニストのアイの母親を演じた萬田久子から登壇者とお客さんへメッセージが伝えられた。真夏の撮影を「悪夢のよう(笑)」と会場を笑わせながらも、「夏休みのお昼寝のようなノスタルジックな気分が残りました」と振り返った。【Movie Walker】