吉岡里帆が『Fukushima 50』で感服した「嘘があってはいけない」という若松組のリアル
「本作に出演させていただき、復興に対しての意識はすごく高まりました」
命懸けで作業をする父親を、ただ待つことしかできなかった娘の心情はいかほどのものだったか。吉岡は若松監督から、家族に撮ってもらった子ども時代の写真を持ってくるように言われたそうで、その写真は実際に小道具の1つとして使われた。
「写真は、家族が一緒にいたという確固たる証拠のようなものです。避難所で自分の荷物をガザガサとまとめるシーンで、自分の父親が撮ってくれた写真が出てきた時、万が一、父親の命が危険にさらされることがあったらすごく怖いと、リアルに感じました」。
本作で、遥香役を演じきった吉岡は「私は東北出身ではないので、実際に知ることができない作業員の方たちやそのご家族の葛藤を、どれくらい伝えられているのか、自分としてもわからないです。また、こういう事象を描いた映画なので、いろんな意見が出ることとは思いますが、私は本作に出演させていただいたことで、震災からの復興というテーマが他人事とは思えなくなりました」。
安田成美演じる総務班の浅野が、命を顧みず危険な現場に残ろうとする若者たちに「あなたたちには第2、第3の復興があるの」と言う台詞も「すごく刺さりました」という吉岡。「復興については、まだなにも終わっていないし、我々の世代が、それを担う努力をしていかないといけない。まずは、震災のことを忘れないでいることが大事で、そのためになにができるのか、どういうことを伝えられるのかと、考えなきゃいけないことがたくさんあると思いました」。
さらに「私も本作に携わったことで、東日本大震災時の福島第一原発事故についてようやく知ったことがたくさんありましたが、第2、第3の復興は、まず知る努力をすることがすごく大事だと思います。そういう意味でも、『Fukushima 50』(フクシマフィフティ)は、若い人たちはもちろん、幅広い世代の方に観てほしいです」と、澄んだ瞳で訴えかけた。
取材・文/山崎 伸子