小栗旬、玉山鉄二、綾野剛が語る、『ルパン三世』の苛酷な役作りと舞台裏
モンキー・パンチ原作の人気アニメ「ルパン三世」を実写映画化する――。それは、映画界において“事件”と呼べるほどのインパクトがあった。そして完成した映画『ルパン三世』(8月30日公開)には、期待を裏切らないルパン一味がいた。ルパン三世役の小栗旬、次元大介役の玉山鉄二、石川五ェ門役の綾野剛にインタビューし、公開を控えた今の心境について話を聞いた。
「うれしい反面、寂しさもあります」と穏やかに語る小栗。「なんだか不思議です。丸2か月間、タイで、本当に夢のような時間を過ごしていたので。もちろん今までも、共演して仲良くなる俳優さんたちもいましたが、今回はちょっと特別なチームができたなという感じがします。いまだにタイの話をし始めると、数時間笑っていられる。それを家に帰って妻の前で話すと『はいはい。みんな楽しかったんですよね』と、すごくつまらなさそうな顔をするんです(苦笑)。やっぱり苛酷だったからこそ、なおさら楽しかったです」。
玉山も「思い入れが強かった分、自分でも不思議なくらい、寂しさがあります。まあ、始まったら終わるので。でも、彼(小栗)が頑張ってパート2を作ってくれるでしょ」と笑顔を見せる。綾野も「よく完成したなと思います」と安堵の気持ちを吐露。「撮影して、当然のように公開できるってことは、今や普通なことではなく、難しいことだと思うので。現場は大変だったから。ああ、完成したんだなって思いました」。
ルパン一味の一体感について小栗はこう話す。「玉山くんとはがっつり仕事をするのは今回が初めてだったから、改めていろんなことを知っていった感じです。剛とは事務所も同じだから、ずっといっしょにやってきている感じはありました。4人(峰不二子役の黒木メイサも含め)に関しては、頑張らなくても気づいたら一味になっていた気がします」。
トレーニング期間を振り返った玉山は、「旬がトレーニング以外の日でも、彼が通っている格闘技のジムなどに僕を連れていってくれました。最初はお互いに『お前、できんの?』みたいな感じで牽制していたと思うんです。実際、僕、本当に吐きそうなくらいしんどくて。でも、実は彼も一発目では吐いたらしくて。後から聞いたんですが『何で、鉄ちゃん、一発目で吐かねえんだ?』と思っていたらしいです(苦笑)。トレーニング帰りに、僕と旬の車が並んだ時も、僕は足がパンパンで、ブレーキを踏むのもしんどくて。でも、旬は涼しい顔で、ブルルーンって飛ばしていったんです。それで無性に腹が立って。僕ももっと頑張らねばダメだなと、スイッチが入りました」。
小栗はうなずきながら「鉄ちゃんを誘ったのは『俺は相当やってっからな』というメッセージは含んでいました。へとへとになっている鉄ちゃんを見て、ちょっと面白かったです」とイタズラっぽい笑みを浮かべる。
綾野は、石川五ェ門役については「記号に徹しようと思っていました」と言う。「僕は一味だから普段もいっしょにいるとか、そういうことはあまりしない方なので、いつもどおりの旬と玉山くんについての関係性でした。ただ、『ルパン三世』の映画化が走り出した時、旬に関しては主演としてルパン三世をやるわけですから、それなりに自分のなかでちゃんと落とし込み、覚悟をした部分があったと思う。だから、僕もそういうテンション、体温はなるべく同じにしたいという思いは常にもっていました」。
玉山も、現場で心地よい緊張感を感じたそうだ。「剛は、刀の立ち回りとかがすごい大変だったと思うし、覚えなければいけない部分が、僕たち以上にあったと思う。でも、自分もそうだけど、良い意味で、みんなからプレッシャーをもらっていたんじゃないのかなと思う」。
さらに玉山は「撮影が始まってからは、旬が座長としていてくれたことが大きかった」と小栗をねぎらう。「僕はそういう部分に関してあまり持ちあわせてないので。旬に対しては、お芝居とは別に、現場での佇まいを学んだというか、彼は僕が持ってないものを持っていたから、得るものが大きかったです」。玉山がそう言った後、小栗に「泣くなよ」とちゃかすと、小栗は「泣いてないよ」と微笑み返した。
ハリウッドで一皮むけた北村龍平監督の指揮下で、日本映画界だけではなく、多国籍のキャストやスタッフの力を結集したビッグプロジェクト『ルパン三世』。小栗たちが扮したルパン一味は、スクリーン狭しと暴れ回っている。是非、実写ならではのルパンたちのパフォーマンスを堪能したい。【取材・文/山崎伸子】