『新聞記者』『よこがお』…映画だからこそ描けた、社会問題に寄りそう傑作4選
実際の事件や事象をモチーフにしながらも、そこに独自のエピソードや視点を加えることで観る者に新たな問題を提起する社会派映画たち。近年公開された良質な日本映画の多くがこの方程式に当てはまるが、直近で思い起こされる作品と言えば、第43回日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ数多くの映画賞を受賞した『新聞記者』(19)だろう。
本稿では『新聞記者』が、WOWOWの名物プログラム「W座からの招待状」で7月19日(日)にテレビ初放送されることにあわせ、社会の問題や世の中の不条理を映画の力でドラマチックに描く、近年見応えのあった4作品を、同枠の放送作品よりピックアップ。それぞれの見どころを紹介したい。
『轢き逃げ 最高の最悪な日』
まずは「相棒」シリーズなどで知られる俳優の水谷豊が、脚本と出演も兼ねた監督第2作『轢き逃げ 最高の最悪な日』(19)。本作は“轢き逃げ”という現実の社会でも頻繁に起こる事件を、劇映画ならではの構成で大きな問題へと引き上げているところが斬新で興味深い。
映画は、結婚を間近に控えた主人公の宗方秀一(中山麻聖)が親友の森田輝(石田法嗣)を乗せた愛車で若い女性を轢き逃げするところから始まり、次に被害者の父親である時山光央(水谷)が抱く疑念にスポットを当て、さらに事件を追う刑事、柳公三郎(岸部一徳)の動向も見つめながら終盤では思いがけない展開を見せる。
そこで浮き彫りになるのは加害者の葛藤と苦悩、被害者遺族の真実を知りたいという切実な想い、そして、そこに大きく横たわる人間ならではの逃れられない“負の感情”。事件を現象として捉えるのではなく、多角的な視点で描いているので、どの人の立場で観るかによって見え方が変わってくる。多くのことを考えさせられるのも、フィクションで構成された劇映画ならではの醍醐味だ。