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『新聞記者』『よこがお』…映画だからこそ描けた、社会問題に寄りそう傑作4選

コラム

『新聞記者』『よこがお』…映画だからこそ描けた、社会問題に寄りそう傑作4選

『ぼけますから、よろしくお願いします。』

ドキュメンタリーを数多く手がけてきた信友直子の劇場映画初監督作(『ぼけますから、よろしくお願いします。』)
ドキュメンタリーを数多く手がけてきた信友直子の劇場映画初監督作(『ぼけますから、よろしくお願いします。』)[c]2018「ぼけますから、よろしくお願いします。」製作・配給委員会

ここまでフィクションの力で問題を提起する傑作を紹介してきたが、ドキュメンタリーにもすばらしい作品がある。その1本がテレビディレクターの信友直子が、認知症の母親と耳の遠い父親にカメラを向けた『ぼけますから、よろしくお願いします。』(18)だ。

映画は、広島県呉市の実家で暮らす母親がしだいにボケていく様と、彼女の世話をする高齢の父親の姿を映しだす1200日の記録。そこではだれの身にも起こり得る日常の苦しみや悲しみが映しだされるが、それだけではない。監督自身の両親が被写体なので、そこには親に対する彼女の優しさや慈しみ、感謝の心がくっきり。

ニューヨークフェスティバルの銀賞などに輝くドキュメンタリー「おっぱいと東京タワー 私の乳がん日記」でも紹介された信友監督が45歳の時の闘病映像、当時の元気だった母親の表情もインサートされるので、その時との対比で親子の関係性や距離感がじんわりと伝わり、心がポッと温かくなる。



小山薫堂とイラストレーターの信濃八太郎が、いまもっとも観て欲しい“本物”の映画を紹介するWOWOWシネマのプログラム「W座からの招待状」では、これまで紹介した4作品、『轢き逃げ 最高の最悪な日』(7月5日放送)、『新聞記者』(7月19日放送)、『よこがお』(7月26日放送)、『ぼけますから、よろしくお願いします。』(8月30日放送)をはじめ、毎週1作品、最新作を中心に見応えのある、骨太な映画を厳選して放送している。

本稿で述べたいずれの作品も、観る者にちょっとした“気づき”をもたらしてくれるはず。ああ、そんな見方や考え方もあるのかと思ったり、 逆の立場になった時に初めてハッとわかることもあるので、心がきっと豊かになる。同じように繰り返されていると思っていた日常が、鮮やかな彩りを帯びてくるかもしれない。

文/イソガイマサト


日曜21時はおうち映画館!名作とつながる「W座からの招待状」の魅力

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