『新聞記者』『よこがお』…映画だからこそ描けた、社会問題に寄りそう傑作4選

コラム

『新聞記者』『よこがお』…映画だからこそ描けた、社会問題に寄りそう傑作4選

『新聞記者』

日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『新聞記者』
日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『新聞記者』[c]2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

新聞記者』は、東京新聞社会部記者の望月衣塑子によるベストセラーの同名ノンフィクションがモチーフになっている映画。メガホンをとった『デイアンドナイト』(19)の藤井道人監督は、映画を原作と同様に実名で描いたり、政治に物申したりという内容にはしなかった。その代わりに、内閣情報調査室で働くエリート官僚の杉原拓海(松坂桃李)と、真相究明のために邁進する新聞記者の吉岡エリカ(シム・ウンギョン)との対峙と葛藤を通して、それぞれの正義、組織の中で“個人”はどう生きるべきなのか?を提示する。

それは、状況は多少違うものの、会社という組織や母親同士のサークル内の同調圧力などに苦悩する多くの人の心を揺さぶり、共感を呼ぶもの。国会議事堂など実際の場所で撮影することでリアルな緊張感を持たせつつ、“権力とメディア”、“組織と個人”のせめぎ合いをエンタテインメントにふさわしいスケールの大きさで活写した世界観にも圧倒される。

もちろん、そこでは異なる環境で己の正義を貫こうとする主人公たちを体現した松坂とウンギョンの演技バトルにも息をのむ。特に松坂は、『彼女がその名を知らない鳥たち』(17)や『孤狼の血』(18)の時とはまた違う顔を見せており、すごみがある。ほかの作品では見られない、思わず歪んでしまったような生々しい苦渋の表情や、ラストのひと言も、日本の社会が抱える大きな問題とともに深く脳裏に焼きつくに違いない。


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