『新聞記者』『よこがお』…映画だからこそ描けた、社会問題に寄りそう傑作4選
『よこがお』
人間は複雑だ。他人に見せるよそ行きの笑顔だけが、その人のすべてではない。そして社会は不条理にあふれている。そんな現代社会と人間の真実を、フィクションの力であぶり出したのが深田晃司監督の『よこがお』(19)だ。カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞した『淵に立つ』(16)と同様、深田監督は本作でも人間の良識とは関係のない理不尽なことで追い詰められるヒロインの姿を見つめていく。
筒井真理子が演じた市子は、周囲からの信頼も厚い訪問看護士。ところが、彼女が仕事で通っていた家の幼い少女がある日失踪して、誘拐の容疑者として逮捕されたのが市子の甥っ子だったために彼女の日常は一変していき…。天使のような微笑みが、不穏な影に包まれていく。体重や髪色などを変えた筒井の変貌ぶり、過去のシーンを回想ではなく同時進行で描く劇映画ならではの“入れ子”構造が、観る者の興味をそそり、深く強く市子の闇へと踏み込んでいくことになる。そこでなにを思うのかは、その人しだいだ。
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1200日に及ぶ家族の記録『ぼけますから、よろしくお願いします。』
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