オリヴィア・ワイルド&ジョナ・ヒル以外にも!俳優出身の名匠候補たち
古くは『市民ケーン』(41)のオーソン・ウェルズ、『ダンス・ウィズ・ウルブス』(90)のケヴィン・コスナーやなど、映画監督に初挑戦した俳優がいきなり名作を撮ってしまうケースは多い。そんなマルチな才人のラインナップに、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(公開中)のオリヴィア・ワイルドと『mid90s ミッドナインティーズ』(9月4日公開)のジョナ・ヒルが新たに名を連ねた!
奇しくも2人が監督デビュー作に選んだジャンルは青春映画。ワイルドはハチャメチャな学園コメディ、コメディ畑で活躍してきたジョナはA24と組んだほろ苦いドラマ作品と、意外な変化球にも思えるが、瑞々しい感性と手練れの演出力を両立させ、共に傑作をつくり上げた。初監督作にして高い評価を得て注目を浴びた彼らを筆頭に、近年俳優から監督へ華麗な転身を遂げた未来の名匠候補を紹介しよう!
ブラッドリー・クーパー
名作のリメイクで手腕を発揮
クリント・イーストウッドから監督を受け継いだ『アリー/ スター誕生』(18)で、歌の才能まで見せつけたクーパー。レディー・ガガとの共演が話題となったが、安定感のある演出力は新人離れしており、監督としても大器の予感。次作は作曲家レナード・バーンスタインの伝記映画で、再び監督と主演を兼ねる。
グレタ・ガーウィグ
デビュー作でオスカー監督賞ノミネート
マンブルコア界隈で早くから演技だけでなくクリエイターの才も発揮。ノア・バームバック監督作『フランシス・ハ』(12)の主演兼共同脚本を経て、半自伝的な『レディ・バード』(17)が絶賛され、第90回アカデミー賞監督賞候補に。続く『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(19)もアカデミー賞に大量ノミネートされた。
ジョーダン・ピール
恐怖と笑いで社会の闇をえぐる
コメディアンとして人気を博した後、コメディ色はあるものの人種差別問題を扱ったスリラー『ゲット・アウト』(17)を大ヒットさせ、世間を驚かせる。第2作『アス』(18)で奇妙なダーク・ホラーという独自路線を確立。90年代のホラー『キャンディマン』(92)の続編ではプロデュースと脚本を担当し、超売れっ子に。
ジョエル・エドガートン
安定感十分のバイプレイヤー監督
ちょっと強面の名脇役というイメージだが、世に名が知れる前から母国オーストラリアで脚本やプロデュースを手掛けていた。不穏な人間関係をスリリングに描いた『ザ・ギフト』(15)で長編監督デビュー。役者である強みを生かして自分の監督作で重要な役を演じることが多く、有能なマルチ・プレイヤーだ。
ポール・ダノ
ゾーイ・カザンとのコンビで良作連発の予感
『リトル・ミス・サンシャイン』(06)のナイーブ青年から『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(07)の胡散臭い宣教師まで演じる実力派が、恋人ゾーイ・カザンと共に脚本を執筆した『ワイルドライフ』(18)で監督業に専念。ある家族の崩壊を少年の目から描いた米国文学の香り漂う作風は、異彩を放つ。
メラニー・ロラン
ドキュメンタリーも手掛けるフランスの才人
『イングロリアス・バスターズ』(09)でヒロインを演じたフランス人女優は監督の腕も一流。ドキュメンタリーも監督し、初のハリウッド作品『ガルヴェストン』(18)ではエル・ファニング主演で、哀しいハードボイルドを撮り上げた。次回作はダコタ&エルのファニング姉妹を主演に起用する。
ジョン・クラシンスキー
スター夫婦の夫が監督としても大ブレイク
Amazonオリジナル・ドラマ『トム・クランシー/CIA分析官 ジャック・ライアン』(18 ~)の主演としても活躍する人気俳優だが、監督デビューは2009年と早い。妻のエミリー・ブラントと夫婦役を演じた『クワイエット・プレイス』(18)が大ヒット。監督と脚本を再び手掛けた続編にも期待大!
エリザベス・バンクス
強い女性像をスクリーンで体現
スポット的な登場で場をかっさらうことの多い個性派女優。監督としては『ピッチ・パーフェクト2』(15)、リブート版『チャーリーズ・エンジェル』(19)とガールズ・パワー全開の作品を任され、#MeToo時代を背負う存在になりそう。次回作は『透明人間』の女性バージョン。ホラーに新しい風を起こすか?
文/村山章