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『ホビット』“エクステンデッド版”より未公開シーンを解説…トーリンとスラインの親子愛、PJのセンスが光る五軍の合戦など

コラム

『ホビット』“エクステンデッド版”より未公開シーンを解説…トーリンとスラインの親子愛、PJのセンスが光る五軍の合戦など

『ホビット 決戦のゆくえ』

トーリンたちはエレボールでスマウグと対決するが、彼の怒りを買い、エスガロスが襲われる原因を作ってしまう衝撃的な結末を迎えた第二部。第三部では、人間とエルフ、ドワーフの同盟軍がオークの大軍と壮絶な戦争を繰り広げる“五軍の合戦”が中心に。また、アーケン石を発見したビルボは、トーリンが財宝に目がくらみ、執着するのを見て、彼に石を渡すべきではないと判断するが…。

エルフとドワーフがついに激突!?
冒頭でのバルドとスマウグの死闘や、ガンダルフを助けに来たガラドリエル(ケイト・ブランシェット)とエルロンド、白のサルマン(クリストファー・リー)が、ナズグルやサウロンを退ける場面でも未公開シーンを確認できるが、その多くは五軍の合戦の描写に割かれている。

エスガロスを襲うスマウグ(『ホビット 決戦のゆくえ』)
エスガロスを襲うスマウグ(『ホビット 決戦のゆくえ』)[c]2014 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

正当な分け前を要求するバルドらエスガロスの人々と、スランドゥイル率いるエルフ軍を前に、エルボールに立てこもるトーリンたち。ビルボはアーケン石をスランドゥイルとバルドに渡したことで、トーリンに殺されそうになるが、ほかのドワーフたちの助けで脱出する。そして、トーリンが要請したくろがね連山のダイン(ビリー・コノリー)とドワーフ軍も到着。エルフと人間、ドワーフはいがみ合いの状態になるが、オーク軍が現れたことで休戦し、共同戦線を張ることにする。

トーリンの説得を試みるガンダルフ(『ホビット 決戦のゆくえ』)
トーリンの説得を試みるガンダルフ(『ホビット 決戦のゆくえ』)[c]2014 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

エクステンデッド版では、共闘する前のエルフ軍とドワーフ軍による戦いも描かれている。ダインの号令で山羊隊が飛び出すのを見て、スランドゥイルは弓隊に合図を送り、矢の雨で応酬。しかし、ドワーフ軍から“羽根車”と呼ばれる対弓兵器が射出され、飛んでくる矢やエルフの兵士も吹き飛ばしてしまう。そのまま、エルフ軍の陣営に山羊隊が突っ込み、激しい戦闘が繰り広げられたところへ、地中からオーク軍が出現する流れになっている。

アゾグ率いるオークの大軍が集結(『ホビット 決戦のゆくえ』)
アゾグ率いるオークの大軍が集結(『ホビット 決戦のゆくえ』)[c]2014 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

ボンブールの無双ぶりとコミカルなボフール
オーク軍の勢いに圧倒され、じりじりと劣勢になる自由の民たち。ダインたちドワーフ軍もエレボールの入口付近に追い詰められてしまう。その時、正気を取り戻したトーリンが仲間を率いて登場し、士気を取り戻したダインたちもそれに続いて敵兵に飛び込んでいく。ここからは未公開シーンのオンパレードに。

肥満体系にもかかわらず、身軽な動きを見せるボンブール(スティーブン・ハンター)。ジャンプをしてドロップキックをしたり、敵にのしかかったり、モーニングスターを振り回すといった無双ぶりを発揮している。彼の兄弟ボフールの活躍も目立ち、オークの剣を受け止め身動きができないノーリを助けるため、斧を敵の眉間に向けて遠投。お次はノーリの異父弟にあたるオーリ(アダム・ブラウン)がピンチで、同じ斧を今度はノーリが投げて弟を救出し、最後にその斧をオーリがボフールに投げ返す形で最初の位置に戻ってくるのだが、オークではなくボフールめがけて飛んでいき、間一髪のところで彼がキャッチするという遊び心あふれるシーンになっている。

続いて、両手足が得物に改造され、頭部に座るオークに操られたトロルが登場。これに対処するため、ノーリとグローインが盾を使って段差を作り、助走してきたボフールが勢いよく駆け上がって、トロルに飛び乗り、オークから操縦席を奪い取るというアクロバティックなアクションも披露してくれる。

戦車に乗って戦うドワーフ
トーリンたちの加勢で勢いを取り戻すが、依然敵の数は多く、状況を打破するにはいたらない。そこで、軍を指揮するアゾグを倒すため、トーリンとキーリ、その兄フィーリ(ディーン・オゴーマン)、グローインが山羊に乗って敵陣営へ向かって行く。エクステンデッド版ではここの経緯も変更され、本作でも屈指の盛り上がりシーンになっている。

トーリンが山羊に跨って先陣を切るのは同じだが、後ろに続くのは6頭の山羊が引く戦車とそれに乗り込んだキーリとフィーリ、グローインと彼の兄で参謀役のバーリン(ケン・ストット)の4人。敵軍に突撃し、次々と敵兵を屠っていくが、集団を抜けたところで、トロルの攻撃に遭い、戦車はトーリンからはぐれて凍った川を進むことに。
トロルの猛攻は続くが、先ほどのトロルを操縦するボフールが現れ、これを撃破。しかし今度は、オークとワーグに追われることになり、弩砲(バリスタ)で応戦するも、山羊が1頭ずつワーグに襲われ、残りが3頭になってしまう。このままでは追いつかれてしまうと判断したバーリンが、グローインたちに引き綱を切り、山羊に乗って進むように指示し、老齢の彼は戦車に残る決断をする。

これらの戦車が疾走するシーンは、車輪に設置された刃物がオークやトロルの首や手足を切断し、ワーグの体もズタズタにするなど、血しぶきが舞うスプラッターな内容になっている。デビュー当初は、スプラッター・ホラーの映画で注目されてきたジャクソン監督だけに、そのころの映像センスを感じさせる。

五軍の合戦のゆくえは?(『ホビット 決戦のゆくえ』)
五軍の合戦のゆくえは?(『ホビット 決戦のゆくえ』)[c]2014 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

トーリンたちの死…
ラダガストとビヨルン、鷲たちの援軍もあり、オーク軍を撃破し、戦いには勝利した。しかし、キーリとフィーリは討ち死にし、アゾグを倒したトーリンも深手を負い、ビルボに見守られながら絶命する。トーリンたち3人の葬儀も未公開シーンで確認できる。アーケン石を手に横たわるトーリンと、その両脇で眠るキーリとフィーリ。3人の間をゆっくりと歩くビルボやドワーフたちの姿が映しだされ、悲しみと悔しさが入り混じった表情からも、悲痛さが伝わってくる。その後、エレボールの領主としてダインが選ばれ、王となった彼がドワーフたちに称えられる場面も追加されている。

この記事で紹介した未公開シーンは一部でしかなく、まだまだ楽しいアイデアに満ちた登場人物たちのかけ合いやアクションシーンがエクステンデッド版には収録されている。劇場公開版を観た時とは印象も変わってくるはずなので、まだ観たことがない人はぜひチェックしてみてほしい。

文/平尾嘉浩(トライワークス)

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