フィクションを超越した不可解なおもしろさ…小栗旬&星野源の新たな“未解決事件”映画『罪の声』
35年前の未解決事件がベースになっている、塩田武士の同名小説を映画化した『罪の声』(公開中)。日本映画としては久々の本格社会派サスペンスとなる本作に誰もが興味を抱くのは、すでに時効になっているとはいえ、実際の事件が謎に満ちているからだろう。
複数の大手企業を脅迫した犯人たちの正体とその目的は? この前代未聞の劇場型事件の脅迫電話になぜ子どもたちの声が使われたのか? そして、事件に幼少期のころの自分の声を使われたその子どもたちはいま、どこで何をしているのか? そんな現実の事件が持つフィクションを超越した不可解な面白さに、人間という生き物はどうしても惹かれてしまうようだ。
その証拠に、これまでにも実際の未解決事件に着想を得た社会派エンタテインメント作品が国内外で製作され、社会に衝撃を与えてきた。デヴィッド・フィンチャー監督の『ゾディアック』(07)は、6人の男女を殺害した猟奇的殺人犯を追う4人の男たちが人生を狂わせていく様を生々しく描いて、観る者を震撼させた。『パラサイト 半地下の家族』(19)のポン・ジュノ監督が、03年の『殺人の追憶』で86年の韓国で実際に起きた忌まわしい猟奇的殺人事件の真相に迫ったのも映画史に残る事件だった。
一方、日本でも伊藤俊也監督が10年の『ロストクライム 閃光 』で昭和最大のミステリー“三億円事件”の謎に挑み、宮崎あおいが主演した塙幸成監督の『初恋』(06)は同じ事件に白バイに乗った実行犯は女子高生だったという大胆な設定で肉迫。園子温監督が、電力会社の幹部女性社員が斬殺された未解決猟奇事件に基づく『恋の罪』を11年に発表したのも記憶に新しい。
さらに、同じ園子温監督の『冷たい熱帯魚』(10)や、Netflix「愛なき森で叫べ」(19)、白石和彌監督の『凶悪』(13)、大森立嗣監督の『MOTHER マザー』(19)などなど、犯人は逮捕されたものの、その動機やおぞましい人間像が未だ解明しきれてない事件を映画化した作品も多い。
要は“現実は小説よりも奇なり”ということなのだろうが、『罪の声』はそんな社会派ミステリーの作品郡の中でもけた違いの大作。小栗旬と星野源、土井裕泰監督らが昭和を代表する大事件の謎に迫り、現代にも通じる強烈なメッセージを投げかけてくるから、観る者は心を大きく揺さぶられることになるのだ。
文/イソガイマサト
※宮崎あおいの「崎」は立つ崎が正式表記
DVD【4Kニューマスター】3,200円+税
Blu-ray【4Kニューマスター版】4,000円+税
発売中
発売・販売元:TCエンタテインメント」