『アモーレス・ペロス』『最強のふたり』…『わたしの叔父さん』へと続く東京国際映画祭グランプリの系譜

コラム

『アモーレス・ペロス』『最強のふたり』…『わたしの叔父さん』へと続く東京国際映画祭グランプリの系譜

のどかで美しいデンマークの農村を舞台に、父娘のように暮らす姪と叔父との日常を映す『わたしの叔父さん』(公開中)。穏やかに流れる時間の中で、主人公である姪が自身の進むべき道に戸惑い、葛藤する姿が描かれる。そんな本作は2019年に開催された第32回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品され、見事グランプリに輝いた。そこで今回は、過去に同映画祭のグランプリを受賞した作品から印象的なものをピックアップし、その系譜を辿ってみたいと思う。

『わたしの叔父さん』は公開中
『わたしの叔父さん』は公開中[c]2019 88miles

オスカーも受賞した中年男性と少年の交流を描くチェコ映画

記念すべき第1回(1985年)は、相米慎二監督の『台風クラブ』(85)がグランプリ(「ヤングシネマ’85」部門大賞)を獲得。その後、第2回(1987年)で『紅いコーリャン』(87)のプロデューサーなどで知られるウー・ティエンミンの監督作『古井戸』(87)、ベトナム戦争を扱った韓国映画『ホワイト・バッジ』(92)も第5回(1992年)で同賞を受賞している。

1996年の第9回では、チェコのヤン・スヴェラークが手掛けた『コーリャ 愛のプラハ』(96)がインターナショナル・コンペティションのグランプリに輝いた(当時は「インターナショナル・コンペティション」と「ヤングシネマ・コンペティション」の2部門を設置)。本作では、あるロシア人女性と偽装結婚したプラハ在住の中年チェリストと、結婚後に西ドイツへ亡命してしまった女が残していった5歳の少年との交流がハートフルに描かれる。

主人公の中年チェリストを演じるのは、スヴェラーク監督の実父で、チェコを代表する俳優のズデニェク・スヴェラーク。本作は、1997年に開催された第69回アカデミー賞の外国語映画賞(現、国際長編映画賞)にも選ばれている。

中年チェリストと少年との交流を描く『コーリャ 愛のプラハ』
中年チェリストと少年との交流を描く『コーリャ 愛のプラハ』[c]1996, BIOGRAF JAN SVE(v)RA(´)K A PORTOBELLO PICTURES

名匠イニャリトゥも東京国際映画祭で華々しくデビュー!


第10回(1997年)には、『ビヨンド・サイレンス』(96)と『パーフェクトサークル』(97)の2作品がグランプリを受賞。のちに『バニラ・スカイ』(01)のタイトルでハリウッドリメイクされたスペイン発のサスペンス『オープン・ユア・アイズ』(97)も第11回(1998年)で選ばれている。

2000年の第13回では、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの監督デビュー作『アモーレス・ペロス』(99)がラインナップにその名を刻むことに。イニャリトゥといえば、ギレルモ・デル・トロやアルフォンソ・キュアロンとともにメキシコ出身の映画監督として活躍し、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(14)と『レヴェナント:蘇えりし者』(15)で2作続けてアカデミー賞監督賞を受賞(『バードマン~』は作品賞も獲得)するなど、長きにわたって世界の映画界を牽引し続けている。

生まれてすぐに亡くなった息子へ捧げる作品として製作された『アモーレス・ペロス』。強盗である兄の嫁に恋をした男、不倫をするスーパーモデル、初老の殺し屋による3つのストーリーで構成され、同じ交通事故の現場に居合わせた、境遇の異なる3人それぞれのドラマが観る者の心をえぐってくる。2000年のカンヌ国際映画祭批評家週間でもグランプリに輝き、東京国際映画祭では優秀監督賞も受賞している。

いくつものオスカー像を抱えるアレハンドロ・G・イニャリトゥ
いくつものオスカー像を抱えるアレハンドロ・G・イニャリトゥ写真:SPLASH/アフロ
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