「るろうに剣心」史上もっともダークなOVA版も…完結編『The Beginning』で語られる“追憶編”とは
シリーズ完結編では、剣心の過去にスポットが…
これまでの作品では、原作から様々な要素を巧みに抽出し、徐々に話に広がりを持たせてきたが、ついに剣心が背負う過去という軸の部分に大きく踏み込んでいくのが『〜The Final』と『〜The Beginning』だ。原作の“人誅編”、“追憶編”にあたるこの2作では剣心の左頬にある十字傷に隠された哀しき秘密が明かされていく。
剣心の前に、突如現れた上海マフィアの頭目、雪代縁(新田真剣佑)。彼は剣心が過去に自らの手で殺めてしまった妻、巴(有村架純)の弟であり、復讐のために天誅ならぬ“人誅”として剣心の大切な人々を次々に襲っていくという、過去の恨みに基づくストーリーが『〜The Final』では綴られていく。
そして、動乱の幕末に話が戻り、『〜The Final』の元凶となったストーリーである『〜The Beginning』。倒幕派である長州藩のリーダー、桂小五郎のもと暗殺者として暗躍し、血も涙もない最強の人斬りと恐れられていた剣心はある夜、若い女、巴に人斬りの現場を見られ、口封じのため彼女をそばに置くことにするが、そこから悲劇が幕を開けてしまう。
剣心の追憶が語られる『〜The Beginning』では、なぜ剣心は妻の巴を殺すことになったのか、誰の手によって十字傷はつけられたのか、などが判明する哀しきゴールに向け、青みがかった映像とともに、シリアスなテイストでストーリーが展開していく。剣心がのちに不殺の誓いを掲げ、贖罪の道を探し彷徨う流浪人として生きるようになる原点でもあり、『The Beginning』というタイトル通り、始まりの物語が綴られる。
シリアスなテイストのOVA版も必見
そんな追憶編は、そのダークなテイストからかテレビアニメ版では映像化されなかったが、過去にOVA作品「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 追憶編」として、原作をはるかに凌ぐ暗いトーンでアニメ化されている。『〜The Beginning』同様に幕末の京都で、剣心が人斬りとして活躍していたところ、巴に殺害現場を見られてしまい、彼女と生活を送るようになった剣心。そのうちに心を通わせるようになるのだが…。
このOVAの特徴が、原作に見られるギャグ要素や人間離れしたアクションなど少年漫画的なテイストが、徹底的に排除されているという点。むしろ暗殺シーンは血生臭く凄惨に、それでいて風景やさりげない生活の描写は美しく描き込まれるなど、物静かでどこかリアリティのある大人向けの作品となっている。
さらに剣心の十字傷の入り方も原作とは異なっており、そのことについてファンの間で様々な考察が生まれるなど、剣心の闇の部分を徹底的に掘り下げた名作として、ファンから親しまれている。
このように「るろうに剣心」における最重要な立ち位置とも言える追憶編と、そこを起点にした人誅編。映画はもちろん、原作や、今回紹介したOVA版などもチェックしてみると、より深く世界観を楽しむことができるはずだ。
文/サンクレイオ翼