父、大暴走!古田新太にニコラス・ケイジ…演技派たちの“強烈すぎる父親”映画、集めました
日本をはじめとする多くの国で“父の日”と定められている本日、6月の第3日曜日。家庭によって父親像は十人十色なのはもちろん、映画でも様々な父親を描いた作品が作られてきた。情けな〜い父親もいれば、ヤバすぎるやつも。そんな個性の強い父を主役とした作品を紹介していきたい。
娘を亡くした父が、狂気のモンスターとなる…『空白』
まずは今年の9月23日(木・祝)に公開予定の『空白』から。本作は『新聞記者』(19)『MOTHER マザー』(20)など話題性の高い作品を多く生みだしている映画会社スターサンズと、『ヒメアノ〜ル』(16)『愛しのアイリーン』(18)といった人の心をえぐるような作品を手がけてきた吉田恵輔監督がタッグを組んだヒューマンドラマだ。
映画は、スーパーの店長である青柳(松坂桃李)に万引きしようとしたところを目撃された女子中学生の花音(伊東蒼)が、追いかけてくる青柳から逃げようと車道に飛び出したところ、車にひかれてしまうショッキングな事故から幕を開ける。娘の父親である添田(古田新太)から付きまとわれ心を病んでいく青柳だが、一方で、加熱する報道によって、さらに混乱と自己否定に追い込まれていく。 “罪と赦し”というヘビーなテーマをサスペンスフルに描いていく。
しだいに疲弊していく青柳もさることながら、娘を失った悲しみから暴走していく添田の狂気をはらんだ姿は圧巻。周囲の話には聞く耳を持たず、「娘は万引きなんかしていない」の一点張りで青柳や関わる人たちを罵り続ける姿や口調、態度には圧や貫禄がありまくりで、とにかく関わりたくないと観ていて思ってしまうほど。
生前の娘にきつく当たるモラハラ親父であった一方、遺体を見て膝から崩れ落ちるなど娘を失った悲しみも随所に漂わせており、お世辞にもいい親とは言えないがどこか憎めない、そんな複雑な父親像が見事に描かれている。
娘を取り戻すために最強親父が殺人マシーンに…『96時間』
リーアム・ニーソンが主演を務め、のちにシリーズ化するほどの人気作となった『96時間』(08)も忘れてはならない1本だ。高校生の娘が旅行先のフランス・パリで何者かにさらわれてしまった元CIA工作員ブライアン・ミルズ(ニーソン)が、かつてのスキルやコネをフル活用して犯罪組織に立ち向かっていく。
旅先で定期的に電話で連絡をすることを条件に、娘に友人との旅行を許可するなど、娘への愛が深すぎるこの父親。誘拐犯に対し電話越しに「必ず見つけだし、お前を殺す」と宣戦布告すると、娘の居場所を特定するために電気椅子で拷問して情報を得たり、犯罪組織のアジトに乗り込み構成員を皆殺しにしたりと、娘の命を救うためには悪党の命など不要といったスタンスでやりたい放題していく。
殺しも殺して30人以上。父の娘への過剰な愛情はどんな犯罪者よりも恐ろしいと見せつけたブライアン。しかしその代償は大きく、次作『96時間/リベンジ』(12)では、1作目で葬り去ったマフィアの息子の父親から、家族ごと命をねらわれることに。子を守ろうとする父親と復讐を誓う父親のぶつかり合いも見逃せない。
息子を殺された怒りで死の淵からカムバック…『レヴェナント:蘇えりし者』
レオナルド・ディカプリオに念願のオスカーをもたらした『レヴェナント:蘇えりし者』(15)も、怒れる父の復讐を扱った作品。西部開拓時代に実在したヒュー・グラスが体験した過酷なサバイバルを下敷きにした小説「蘇った亡霊:ある復讐の物語」が原作で、映画ではそこに息子を殺された男の復讐の要素が加えられている。
1820年代のアメリカ北西部、息子ホークとともに毛皮ハンターの一員として生きるグラス(ディカプリオ)は、狩猟中に熊に襲われ瀕死の状態に。グラスの死を見届けるべく一団からホークのほかフィッツジェラルド(トム・ハーディ)らがグラスの元に残るが、先を急ぐフィッツジェラルドは隙を見てグラスを殺そうとし、それに気づいたホークが反抗するも返り討ちに遭ってしまう。
復讐にとりつかれたグラスは、さっきまでの瀕死が嘘のように生命力をみなぎらせ、フィッツジェラルドを追いかけていく。生魚や生肉に食らいつき、先住民の襲撃をかわし、時には寒さをしのぐために馬の死骸の中に入って、必死に生に食らいついていく姿はまさに鬼のよう。そんな男を体現するため極寒の中の撮影を自らこなしたディカプリオの熱演は圧倒的だ。