「古い慣習を変革しなければいけない」小栗旬が見据える、日本映画界と自身の“再構築”
ハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』(14)と『キングコング:髑髏島の巨神』(17)の世界観がクロスオーバーする、「モンスター・バース」シリーズの最新作『ゴジラvsコング』がついに公開され、初登場1位の大ヒットを記録している。
映画界を代表する2大モンスターが文字通りの頂上決戦をする本作で、待望のハリウッド映画デビューを果たした小栗旬。子どものころから憧れていた夢の現場で、彼はなにを感じ、どんな試練を味わったのか。そして世界への第一歩を踏みだしたその瞳の先にはどんな未来が見えているのか。MOVIE WALKER PRESSでは、撮影当時の喜びと興奮とともに、小栗旬の“いま”に肉迫した。
「2大怪獣がただただ激突する仕上がりは、気持ちよかったです」
――『コジラvsコング』に出演された経緯を教えてください。
「自分の英語力が流石に参加できるレベルではなかったので、実は最初、お断りしたんです。でも、最初の台本では身体に翻訳機が埋め込まれているというキャラクターで、『日本語でしゃべっても英語に勝手に変わる設定だから心配しなくていい。実際にしゃべる英語のセリフも少ないから大丈夫』と言われたので出演を決めました。ところが、最終的に芹沢猪四郎博士の息子で、自身も技術者の芹沢蓮に変わって。英語もしゃべらなければいけないキャラクターになったので、セリフをひたすら練習し、製作陣による英語のチェックをクリアしてから出演することになったんです」
――製作陣は、なぜそこまで小栗さんに固執したんでしょう?
「監督のアダム(・ウィンガード)が三池(崇史)監督の大ファンで。特に『クローズZERO』が大好きな彼が『この役は旬がいい。彼にやってもらいたい』って強烈にプッシュしてくれたみたいなんです。アダムとの最初のミーテイングの時も、自分はどれぐらい日本映画が好きなのか、ということを熱く語ってくれたんですが、アダムのそういう愛があって、自分はここに辿り着きました」
――芹沢蓮のキャラクター設定も最初のころから随分変わったみたいですね。
「最初はもっとクレイジーな科学者で、撮影もそれで進めていったんですが、その後、ウォルター・シモンズ(デミアン・ビチル)を私利私欲のためにモンスターを動かしたいと思っているハイテク企業、エイペックス社のCEOにして、蓮は彼のもとで働く技術者にしようという話になったんです。なので、もともとの撮影は一昨年の3月にオーストラリアのゴールド・コーストで行ったんですが、去年の年初めにアメリカで数日追撮をして、結果、いまの形になったという感じですね」
――劇中では芹沢のキャラクターについてあまりインフォメーションがないですね。
「最初の台本では、どのキャラクターもバックグラウンドがもっと描かれていたんです。蓮に関しても、彼が地中地図製作者のネイサン・リンド(アレクサンダー・スカルスガルド)に『うちの父はあなたのことを尊敬していました』って言うシーンなどがあったんですが、芹沢博士の息子なのかどうかも分からなくなってしまった(笑)。たぶん今回の製作陣は、途中でゴジラとコングの戦いに特化したほう方が映画が成功するという考えに辿り着いたんでしょうね。でも、それでよかったと思います。僕も2大怪獣がただただ激突する仕上がりを観て、気持ちよかったですから(笑)」
――前作の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(19)で壮絶な死を遂げた芹沢猪四郎博士役の渡辺謙さんからは、撮影前になにかアドバイスはありました?
「自分から連絡をとらせていただいて、一度2人きりで食事に行ったんです。謙さんがその時に『自分のゴジラ映画への参加が終わってしまっただけに、君の参加が決まってうれしい』と喜んでくれて。そのうえで『言語の違いなんか気にせず、自分の思ったものを表現したほうがいい。そうしないと挑戦する意味がないよ』って背中を押してくれました」
――謙さんからバトンを受け取ったプレッシャーはありましたか?
「なかったと言ったら嘘になるけど、自分にとってすべてが初めての経験だったし、最初からすべて上手くできるとも思っていなかったので、とりあえず自分のできることを精一杯やろうと思っていました。ただ、ゴジラ映画ということもあるのか、日本人の僕を温かく迎えてくれる素敵なスタッフ陣だったんですよね。なので、気負うこともなかったし、ものすごくいい想い出として残っています」