映画ファンが『オールド』に惹かれる理由とは?『ミッドサマー』『クワイエット・プレイス』らと呼応するテーマ性
差し迫る命のリミット…“時間”との戦いを巧みに使った、演出の妙!
「異常なスピードで時間が経過する謎の空間」に閉じ込められた『オールド』の家族たち。計算上では、このビーチでは1日で約50年の時間が進むため、子どもたちはわずか数時間で大人になり、大人はみるみる老人に近づいていく。人によっては早くビーチから脱出しないと1日も経たずに死を迎えてしまい、その1分1秒と無駄にできない“ハラハラ感”も本作の見どころ。
“時間”との戦いを描いた作品で思い浮かぶのは、秘境のビーチで人食いザメに襲撃され、足にケガを負ったサーファーの決死のサバイバルを追った『ロスト・バケーション』(16)だ。まず、サメに命をねらわれるというだけでも相当な状況なのにもかかわらず、必死の思いで主人公がたどり着いた場所が岸から離れた岩場で、しかも時間と共に満ち潮で足場が沈んでいく。ケガによる大量の出血や岩場の周囲をぐるぐると回るサメとの距離がだんだんと近づくことによる緊迫感、刻々と迫る命のタイムリミットに、観ている側の心臓の鼓動も自然と早くなっていく。
もう一本、近年鮮烈な印象を残したのが、全編PC画面上で展開される『search/サーチ』(18)。失踪した高校生の娘の行方を捜す父親が、彼女が利用していたSNSにアクセスすることで、知られざる一面を目にしていく様が映しだされ、内蔵カメラの映像やFacebook、メッセージのやり取りといったパソコンの機能を巧みに使ってストーリーが進んでいく。斬新な手法に目が行きがちな本作だが、娘に命の危険が迫っていると考え、死に物狂いで彼女を見つけようとする父親のドラマも相当なもの。手掛かりを見つけてもなかなか真相にたどり着けない彼の焦りが画面越しに伝わり、思わず手に汗を握らされてしまう。
Next
『クワイエット・プレイス』が投げかける、メッセージ性とのつながりも
作品情報へ