話題作を続々輩出!創設スタッフに聞いたTSUTAYA CREATORS’ PROGRAMの企画選定と映画化への道のり
長澤まさみと高橋一生が共演した『嘘を愛する女』(18)、続編のTVシリーズも放送された『ルームロンダリング』(18)、土屋太鳳の狂気的な演技が話題になった『哀愁しんでれら』(21)。これらはすべて「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM(TCP)」のコンペで高く評価されたオリジナル企画を映画化した作品。「TCP」とは「本当に観たい映画作品企画」を募集から映画化まで全面バックアップし、映像クリエイターと企画を発掘するTSUTAYA発の映像クリエイター支援プログラムだ。
2015年度にTCP初代グランプリに輝いた中江和仁監督の企画を映画化した『嘘を愛する女』を皮切りに、『ルームロンダリング』、『ブルーアワーにぶっ飛ばす』(19)、『ゴーストマスター』(19)、『水上のフライト』(20)、『哀愁しんでれら』、『裏アカ』(21)、そして現在公開中の『先生、私の隣に座っていただけませんか?』『マイ・ダディ』を含め、これまで9作品が劇場公開されている。同プログラムの創設スタッフとしてこれまで数々の映画化企画に携わってきた、カルチュア・エンタテインメント株式会社映像事業本部カルチュア・パブリッシャーズ カンパニー長の後藤哲氏に、TCPの成り立ちや映画化までの流れ、そして今後の展開について語ってもらった。
「監督志望の方たちをTSUTAYAなりにサポートできないか、それがTCPの始まり」
――TCPを始めたきっかけはどのようなことだったのでしょうか?
「2014年の東京国際映画祭で開催されたトークイベントに、カルチュア・エンタテインメントでTSUTAYA TVの責任者をしている者が登壇した際、映画監督志望の方たちから『映画を作っても劇場公開するまでのハードルが高い』という声を聞いたらしいんです。撮影所システムがあった時代には、映画監督になる道筋も用意されていたはずですが、いまの時代は撮影する機材は手軽に手に入っても、商業映画の監督を目指せる道筋がないと。私は以前、CCCグループのレントラックジャパンという会社で商品調達の仕事の一つとして、入選作をパッケージ化してTSUTAYAのレンタル回数で優勝を競う『インディーズムービー・フェスティバル』という自主映画の映画祭の企画を担当していました。その経験もあったので、監督志望の方たちを僕らなりにサポートできないかと社内でいろいろ模索するなか、『まずは企画コンペのような形でやってみたらどうか』と、2015年に第1回の公募を開始したのが、TCPの始まりなんです」
――賞金という形ではなく、あくまで総製作費を負担することにした理由は?
「もともと商業映画を作ることを目指すべきだと思ったので、賞金という形は最初から考えていませんでした。そもそも長らく助監督をされてきて『いつか自分も映画監督デビューしたい』と思っている人たちの声がきっかけとなって生まれた企画なので、映画製作を実現させるためのお手伝いをするという形にしないと、意味がないと思ったんです」
――初年度はどれぐらいの企画が集まりましたか?
「474本の応募がありました。思っていたより多かった印象がありますね。応募要件に『プロアマ、経歴、年齢は一切問わず』とあるので、既に現役で活動されている映画監督からの応募もいくつかありました。TCPではご縁がなかったですが、その後商業映画として公開されている作品もあります。現役の監督にとっても、オリジナル企画で映画を撮るのはなかなか難しいところがありますからね」
――入選の基準をどのあたりに置きながら、審査されたのでしょうか?
「ジャンル問わず、エンタメ作品として高い完成度を目指せるような企画を選出したいという思いがありました。正直最初は手探りだったのですが、僕のそれまでの経験上、つくりたい作品の企画は出せても、商業的なバランス感覚をもった人はそれほど多くないと感じていたので、当初は部門を細分化せずに希望を書いてもらう形にしたんです。応募者の中には『脚本だけ担当したい』という方や『企画者にクレジットされるだけで構わない』という方もいましたが、やはり『自分の企画で監督をやりたい』と希望する人が大多数ではありました」