話題作を続々輩出!創設スタッフに聞いたTSUTAYA CREATORS’ PROGRAMの企画選定と映画化への道のり
「いかにエンタメ作品として成立させられるかを目指して企画をブラッシュアップさせていく」
――映画化に向けて、TCPは具体的にどんなバックアップをされていくのでしょうか?
「受賞後は、監督と弊社の幹事会社プロデューサー、映画制作会社で活躍されているプロデューサーとで、いかにエンタメ作品として成立させられるかを目指して、脚本直しを進めながらブラッシュアップさせていくんです。映像業界には長年お付き合いのある方が大勢いらっしゃるので、過去作品の傾向を踏まえて相談しながら、マッチングさせていただくことが多いですね。『製作費として最低5000万円を保証します』と言っても、実際にはそれ以上の金額が必要になるわけで、製作委員会方式で出資を募るケースも増えています。新人監督のオリジナル企画に出資するのはどの会社にとってもリスキーですが、配給宣伝をお願いする会社には最初から入ってもらって一緒に進めるパターンもありますね。もちろん出演してくださるキャストの協力も大きいです。完成までには思った以上に時間がかかるんです」
――ほかの映画祭や映画賞にはない、TCPならではのポイントを挙げるとすると?
「企画のタネを映画だけではなくメディアミックス展開させられるのも我々の強み。自分が考えた企画が映画のみならず、漫画やドラマにもなるなんて面白いですよね。映画化第1作の『嘘を愛する女』では、製作委員会に徳間書店にも入ってもらい、ノベライズを出版してTSUTAYAの店頭で大展開したところ、15万部の売上を記録しました。2作目の『ルームロンダリング』も、続編が映画と同じキャストでドラマ化され、KADOKAWAの『コミックビーム』でコミック連載も行った後、上下巻でコミカライズが実現しました。『ブルーアワーにぶっ飛ばす』の箱田優子監督は美大出身で、絵コンテがすごく良かったので、『コミカライズしませんか?』と提案したところ、ご本人が描いてくれたんです。『ブルーアワーにぶっ飛ばす』は、シム・ウンギョンさんと夏帆さんの人気もあって、2020年7月のコロナ禍の韓国において322スクリーンで公開されたんです。2020年に韓国で公開された日本映画のランキングで6位に入り、箱田監督は第22回上海国際映画祭アジア新人部門で最優秀監督賞を受賞されました。海外の映画祭などにも積極的に出品することで、TCPから生まれた作品を世界中の人に楽しんでもらえる機会を増やしていけたらと考えています」
「TCP出身の人たちが日本映画界を背負って立つような監督に育ってほしい」
――これまでの6年間の取り組みを振り返っていかがですか?
「すべての作品で利益が上がっているわけではないですが、2015年当時とそれほど心境は変わっていません。『CREATOR’S PROGRAM』とうたっているからには、クリエイターがさまざまな形で評価されて、次々新作を撮れるようになることも目標なので、まだまだこれからですね。TCP出身の人たちが日本映画界を背負って立つような監督に育ってほしいという思いもありますし、TCP作品から大ヒットも生み出したい。『TCPから面白い作品がたくさん生まれているね』と思ってもらえるように、レーベル全体で底上げしていけたらいいなと考えています。いまは企画部門、脚本部門、監督部門と3つに細分化されていて、企画部門には自由な発想で応募される方も多いんです。過去には映像業界志望ではない学生の方がアイデア豊かな企画を出して、最終選考まで残ったこともありますよ。最終審査会に進めなかったものでも、映画会社とマッチングさせる企画マーケットという展開も実施しています」
――配信作品も増えていますが、TCPとしてはあくまで劇場公開を前提にされていますよね?
「時代が変われば考え方も変わってくるとは思いますが、私自身は映画館がなくなることはないと信じているんです。特に“映画を観る”という行為に関しては、映画館でしか体験できない没入感がある。いまのところは劇場公開を前提にしながら進めていきたいと思っていますが、時代の変化でビジネス面を考えて、配信ファーストの作品というのも将来的には出てくるかもしれません」
取材・文/渡邊玲子