「ムーミン」「くまのプーさん」「指輪物語」はここから誕生した!著名作家たちの人生に迫る映画たち
「くまのプーさん」誕生とヒットの裏側にある父子の苦悩『グッバイ・クリストファー・ロビン』
『グッバイ・クリストファー・ロビン』(17)は、A・A・ミルンによる名作童話「くまのプーさん」の誕生秘話や親子の絆を描いたヒューマンドラマ。「スター・ウォーズ」続三部作のドーナル・グリーソンがミルンを演じるほか、彼の妻ダフネ役で『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(21)などでハーレイ・クインを怪演するマーゴット・ロビーが出演している。
作家のミルンは第一次世界大戦から帰還するがPTSDに苦しんでいた。やがて妻のダフネとの間に息子、クリストファー・ロビンが誕生し、静養のためロンドンから田舎町へと移住することに。しかし、なにも書こうとしない夫に愛想を尽かしたダフネは実家に帰ってしまう。かくして、息子と2人で暮らすことになったミルン。最初は気が進まなかったが、息子と森を散歩したり、彼がぬいぐるみで遊ぶ様子を見守るなかで「くまのプーさん」の構想を練り上げていく。
「くまのプーさん」といえば、誰もが一度は目にしたことがあるだろう物語で、長きにわたって人々を楽しませ、世界中の人々に愛されてきた。一方で、その背景には戦争に苦しんだ過去があり、作品の大ヒットに反して、自身をモデルにした父親に対するクリストファー・ロビンの反発もあった。父子の対立や関係の修復を丁寧に映しだしたストーリーに胸がギューッと締めつけられ、絵本で見たことがあるようなシーンや美しいイギリスの田舎町の風景が観る者の心に安らぎを与えてくれる。
18歳で「フランケンシュタイン」を書き上げた女流作家の孤独な闘いが胸を打つ『メアリーの総て』
『メアリーの総て』(17)は、200年にわたって愛され続けるゴシック小説「フランケンシュタイン」をわずか18歳で書き上げたイギリスの女性作家、メアリー・シェリーの半生を描いた作品。本作が長編デビュー作となったサウジアラビア人初の女性映画監督、ハイファ・アル=マンスールが監督を務め、主人公のメアリー・シェリーをエル・ファニングが演じている。
小説家を夢見ていた16歳のメアリーは、折り合いの悪い継母と離れ、父の友人のもとで暮らし始める。そこで妻子ある詩人、パーシー・シェリーと出会いお互いの才能に惹かれ、駆け落ちする。女の子が誕生し幸せな日々を過ごすメアリーたち。しかし、パーシーには借金があり、その取り立てから逃げる途中で娘は命を落としてしまう。深い悲しみと喪失感に打ちひしがれるメアリーはある日、滞在していた悪名高い詩人、バイロン卿の別荘で開かれる怪談の会への参加を持ちかけられる。
ダメ男ぶりが際立つ夫に振り回されるメアリーの姿に、「まだ若いのになぜこんな男に…」と思う人も多いはず。しかし、そうした悲惨な生活を送ったからこそ、名作「フランケンシュタイン」を書くことができたのかもしれないと思うと、なんとも皮肉なものだ。本作の舞台は1800年代だが、現代社会とも深くリンクするメッセージ性を持っている。己の力でつらい現実と向き合い、前へ進もうとするメアリーに大勢が勇気づけられるに違いない。