『ゲット・アウト』『透明人間』から『ハロウィン KILLS』へ…“ブラムハウス”が映画ファンを魅了する理由
高品質の作品を次々に放つ、映画ファン注目の製作会社
ブラムハウス・プロダクションは2000年に、映画プロデューサーのジェイソン・ブラムが立ち上げた映画製作会社。2007年、わずか1万5000ドルで製作された『パラノーマル・アクティビティ』が1億ドル以上の全米興行収入を上げたことで一躍、注目の的となる。以後、同社はホラーに製作の軸足を置き、「インシディアス」シリーズや「パージ」シリーズなどの人気作を次々と放ってきた。その一方で、『セッション』(15)や『ゲット・アウト』(17)、『ブラック・クランズマン』(19)などで全米の賞レースを賑わせ、アカデミー賞にもノミネートされた秀作を連打。最近も『透明人間』(20)や『ザ・ハント』(20)、『ザ・スイッチ』(21)などのヒット作を送りだしながら、テレビや配信の分野でも積極的に良作を輩出している。
『パラノーマル・アクティビティ』は極端な例だとしても、ブラムハウスの映画は基本的に小規模のバジェットで製作され、多くは500万ドルから1000万ドル以内に抑えられている。ちなみに、米ワーナー・ブラザース社が製作した今年のヒット作『ゴジラvsコング』には1億6000万ドルの製作費が注ぎ込まれている。ローリスク・ハイリターンはビジネスの理想だが、ブラムハウスはそれを実現した超優良企業でもあるのだ。
映画ビジネスにおいてローリスク・ハイリターンを実現するには、なにより才能の見極めが重要になるが、その点、ブラムハウスのフィルムメーカーに対する嗅覚は鋭い。映画人が注目する存在となった『アス』(19)のジョーダン・ピールを『ゲット・アウト』で、『ラ・ラ・ランド』(17)のデイミアン・チャゼルを『セッション』で発掘した功績の大きさは、言わずと知れたところだろう。ちなみに、『ゲット・アウト』は450万ドル、『セッション』に至ってはわずか330万ドルで製作されており、名作映画に必要なことが、いたずらに予算をかけることではないことをブラムは体現している。
一方、お得意のホラーの分野では、「インシディアス」シリーズでジェームズ・ワン、「ハッピー・デス・デイ」シリーズでクリストファー・ランドンなど、伸び盛りだった俊英の飛躍の手助けをするばかりか、『シックス・センス』(99)、『サイン』(02)以降キャリアが低迷していたM.ナイト・シャマランを『スプリット』(17)などの作品で再生させ、『オールド』(21)の成功に繋がったことも見逃すべきではない。
これらの監督たちに、とにかく自由に作らせる。ハリウッドのメジャースタジオで作られた作品の場合は、多くの人間が製作に携わるので、多方面に忖度できる監督が起用されることも少なくない。しかし、ブラムハウスの場合は予算という縛りさえ守れば、あとは好きに作れるのだから、フィルムメーカーとしては伸び伸びと才能を発揮できるというワケだ。