『ゲット・アウト』『透明人間』から『ハロウィン KILLS』へ…“ブラムハウス”が映画ファンを魅了する理由

コラム

『ゲット・アウト』『透明人間』から『ハロウィン KILLS』へ…“ブラムハウス”が映画ファンを魅了する理由

巨匠に対するリスペクトが生みだした、新たな傑作『ハロウィン KILLS』

人々の心理を描くドラマ的な展開と、過激な描写が違和感なく共存するのもブラムハウス作品の特徴
人々の心理を描くドラマ的な展開と、過激な描写が違和感なく共存するのもブラムハウス作品の特徴[c] UNIVERSAL STUDIOS

以上を踏まえて、ブラムハウス製作の「ハロウィン」シリーズを見てみよう。2018年の『ハロウィン』は1000万ドルで製作され、1億6000万ドル弱の全米興収を計上した。これは『IT/イット それが見えたら、終わり。』(17)に次ぐホラー映画史上、歴代2位の記録。このヒットを受け、大幅なスケールアップを果たした『ハロウィン KILLS』は製作費2000万ドルという、ブラムハウス作品のみならずホラー映画としてもかなりの大作だが、今年10月15日に全米公開されるや、わずか3日間で5000万ドル突破の興行収入を上げ、週末だけで製作費を回収するメガヒットに。この成績は先に述べた『ゴジラvsコング』や『TENET テネット』(20)をも上回っており、コロナ禍でも突出したヒット作となっている。ハロウィンシーズン真っただなかということもあり、この先も数字を確実に伸ばすだろう。


デヴィッド・ゴードン・グリーンが描くのは、殺人鬼が街を襲う恐怖だけではない
デヴィッド・ゴードン・グリーンが描くのは、殺人鬼が街を襲う恐怖だけではない[c] UNIVERSAL STUDIOS

そして、この成功を支えたのも、やはり才能あふれるフィルムメーカーたちだ。2018年の『ハロウィン』をデヴィッド・ゴードン・グリーンが監督すると決まった時、多くの映画ファンは疑問を抱いた。『スモーキング・ハイ』(08)などの優れたコメディ・ドラマや『ボストン ストロング 〜ダメな僕だから英雄になれた〜』(18)のような実録感動作を放ってはいるが、ホラー演出の経験がないこの監督で大丈夫だろうか?そんな不安をブラムは「しっかりとドラマを撮れる人に、この映画を撮ってほしかった」と一蹴。その結果、生まれた『ハロウィン』はホラーファン向けには終わらない、幅広い層にアピールする一級のエンタテインメントに仕上がり、興行史に残るほどのヒットとなった。

“マスター・オブ・ホラー”とも称され、映画のみならず様々なポップカルチャーに影響を与えたジョン・カーペンター
“マスター・オブ・ホラー”とも称され、映画のみならず様々なポップカルチャーに影響を与えたジョン・カーペンター写真:EVERETT/アフロ

1978年の『ハロウィン』を監督した、シリーズの生みの親である“マスター・オブ・ホラー”ことジョン・カーペンターは、グリーン同様にドラマと恐怖を結びつけ、『ニューヨーク1997』(81)、『遊星からの物体X』(82)、『ゼイリブ』(89)、『マウス・オブ・マッドネス』(95)などを次々と放ち、クエンティン・タランティーノやエドガー・ライトをはじめ、多くのフィルムメーカーたちが熱烈なファンを公言している。その影響力はあまりに広く、世界中にファンを持つゲーム「メタルギアソリッド」シリーズや、Netflixのヒット作「ストレンジャー・シングス」など、映画以外のポップカルチャーにも多大な影響を与えてきた。

ブラムハウスの創立者、ジェイソン・ブラム
ブラムハウスの創立者、ジェイソン・ブラム写真:EVERETT/アフロ

『ハロウィン KILLS』では、ブラムの指揮のもとグリーンが再びメガホンをとり、敬愛するカーペンターを製作総指揮に招いた。これを受け、カーペンター自身も音楽を自ら手掛けるなど全面的に協力している。シリーズを生みだした巨匠の意見を尊重して、マイケル・マイヤーズという映画史に残るキャラクターを深く掘り下げていく本作は、ブラム、グリーンをはじめとするスタッフの映画愛、リスペクトによって作られているのだ。

ブラムハウスにとっても最大規模のフランチャイズとなった「ハロウィン」シリーズは、2018年の『ハロウィン』と『ハロウィン KILLS』、そして2022年製作の完結編『Halloween Ends』へと発展していく。言うまでもなく、次作でもブラムやグリーン、カーペンターが顔を揃えることになっており、期待値は高まるばかりだ。

ファンとしては楽しみが尽きないが、まずは『ハロウィン KILLS』を観なければ先には進めない。マイケル・マイヤーズとは何者なのか?その正体に迫る本作は、前作よりさらにパワーアップした畳みかけるテンポと、単なるホラー映画に留まらない物語性の高さが観客にズシリとした満足感を残す、ブラムハウスらしいエンタメ感が目いっぱいに詰まった力作だ。ハロウィンシーズンに本作を体感できる喜びに感謝しつつ、劇場へと足を運んでほしい。

文/有馬楽


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