『グリンチ』『キャロル』『東京ゴッドファーザーズ』…クリスマス気分を上げてくれる映画たち
サンタはどのようにして生まれたのか?Netflix映画『クロース』(19)
Netflix映画『クロース』はスペイン発の、サンタクロース誕生秘話。郵便事業を営む一家のぐうたら御曹司ジェスパー(声:ジェイソン・シュワルツマン)が、父親から辺境の町の郵便局に飛ばされ、6000通の手紙を配達するノルマを課せられる。ところがその町は、住民が2手に分かれていさかいを繰り返して荒みきっており、手紙を書く人なんて滅多にいない。そこでジェスパーは、“木のおもちゃ作りが得意”な木こりのクロース(声:J・K・シモンズ)を利用して、町の子どもたちに手紙を書かせてノルマを達成しようと思いつく。
“サンタさんの活動はこんなふうに始まったの!?こんな人だったのか!”という驚きとワクワクが詰まっている本作。監督のセルジオ・パブロスは、『ヘラクレス』(97)や『ターザン』(99)などのディズニー作品、「怪盗グルー」シリーズなどのイルミネーション作品に関わってきた才人。しかも本作は、2Dの手描きにこだわったうえで、照明など最新技術を施したそう。何世代も前から“敵”と思い込まされてきた双方の子どもたちが、ケンカするより仲良くした方が楽しいと気づき、理想や情熱を忘れた小学校の先生も教える喜びを取り戻し、愛する者を失って悲しみに沈んでいたクロース自身も、子どもたちにプレゼントすることで癒されていく。ジェスパーの邪な計画で始まった“手紙作戦”が、町全体を変える。これぞ、クリスマス精神!“みんなの幸せ”をたっぷり胸に吸い込めるハッピーな感動作だ。
ホームレス3人組に与えられたプレゼントは…『東京ゴッドファーザーズ』(03)
晴れやかなクリスマスの日に重いテーマ?と感じる方もいるかも知れないが、『東京ゴッドファーザーズ』は観始めたら最後、テンポのよさにグイグイ引き込まれ、一気見必至。独特の世界観に浸る心地よさを覚えさせながら、予想外の幸福感へと着地する。新宿で暮らすホームレス3人組、酒飲みのギンちゃん(声:江守徹)、元ドラァグ・クイーンのハナちゃん(声:梅垣義明)、家出少女のミユキ(声:岡本綾)は、クリスマスの晩、ごみ漁り中に赤ん坊を発見。ハナちゃんは“神様からのクリスマスプレゼント”と喜び、勝手に“清子”と名付けてしまう。そして雪降るなか、3人は清子の本当の親を捜してさまよい歩く。
まるでコントを見ているかのような、3人の丁々発止がたまらない。東京を彷徨い歩くなかで、そんな3人の、口には出せない悲しい生い立ちや境遇が明らかになっていく。新宿をはじめ東京の見慣れた風景が、やけにリアルなのも心をくすぐる。監督はその才能が惜しまれる、いまは亡き今敏。個性的でパワフルな画、随所に挿入される迫力のアクション、スピード感たっぷりの展開、心にしみる人情と優しさ。底辺で生きる人間たちにも、そうなった理由や、あふれるほどの人生の物語もある。クリスマスの喧騒やイルミネーションの遠~いところから、「聖なる気持ち」を分け与えてくれる傑作アニメーションだ。