『グリンチ』『キャロル』『東京ゴッドファーザーズ』…クリスマス気分を上げてくれる映画たち
アラサー3姉妹のドタバタドラマ『La Buche ブッシュ・ド・ノエル』(99)
最後は、クリスマスをしっとり、だけど暗くなりすぎずに過ごしたい大人におすすめの2本。『La Buche ブッシュ・ド・ノエル』はクリスマス直前、母親の2番目の夫の葬式に集まったアラサー3姉妹と、その家族や父母を取り巻く人間模様、人生模様を綴った会話劇。忙しなくクリスマスの準備を進めるなか、3姉妹それぞれに問題が続出していく。
もみの木を買いに行ったり、お花屋に行ったり、家族で集まるクリスマスパーティ用の料理を作ったり。日本の比にならないほど万端な準備をするフランスのクリスマス事情が垣間見られるのも楽しい。そしてもちろん“アムール”の国フランス、一人につき1つ2つ“恋や情事”が絡んでくるのが必定。不倫相手の子を妊娠している長女をサビーヌ・アゼマ、夫の浮気に気づきつつクリスマスの準備に奔走するブルジョワな次女をエマニュエル・ベアール、クリスマスが大嫌いな三女をシャルロット・ゲンズブールが演じ、フランスで大ヒットした家族ドラマ。まさに「セ・ラ・ヴィ」と感じさせてくれる、粋な落としどころにニンマリ。
身を焦がすほど熱い女性同士の恋模様…『キャロル』(15)
そして序盤の出会いのシーンから、ケイト・ブランシェットのエレガントな美しさや、テレーズを演じるマーラのコケティッシュでキュートな魅力に溜息が漏れてしまうのが『キャロル』。1950年代のニューヨークを舞台に、ブランシェット演じるキャロルと、ジャーナリストを目指しながら高級デパートで働くテレーズ(ルーニー・マーラ)の、女性同士の美しい恋を描く。エレベーターから降り立つ毛皮を身に纏った女性に、テレーズがハッと目が釘づけになるその瞬間、観客も同時に鳥肌が立つはず。子どもにクリスマスプレゼントを買いに来たという、そのキャロルが手袋をカウンターに忘れたことからふたりの交流が始まっていく。
監督は『エデンより彼方に』(02)、公開中の『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』のトッド・ヘインズと聞けば、この“うっとり、しっとり”な大人な世界観に、“なるほど”と唸らされる。夫のいるキャロル、フィアンセのいるテレーズ。そんなふたりの恋の行方は――。クリスマスの夜、狂おしい恋に身を焦がしたい人におすすめの、大人の恋愛映画だ。
この時期だけの独特な空気に包み込まれて、誰だってどこか浮足立ってしまうクリスマス。そんな時、とびきりの映画を観ればきっと、さらに楽しくなるはず。ストーリーのなかのクリスマスと一緒になって楽しみながら、2021年のラストスパートを彩ってみてはいかがだろうか。
文/折田千鶴子