桜井玲香が明かす『ウエスト・サイド・ストーリー』への想い…「よりメッセージ性が強くなり、深く理解できるようになったいまだからこそ、観るべき名作だと思います」

インタビュー

桜井玲香が明かす『ウエスト・サイド・ストーリー』への想い…「よりメッセージ性が強くなり、深く理解できるようになったいまだからこそ、観るべき名作だと思います」

「マリアはすごくきれいな歌声で、うらやましく思いました」

好きなキャラクターについて尋ねると、「えーっ!選べないです」と悩みつつ、シャークスのリーダー、ベルナルドの恋人アニータを選んだ。「愛情深く、意志が強くて、ちゃんと夢を持っている。終盤、トニーとマリアの恋をなじるアニータと、トニーへの愛を訴えるマリアが、2人で『ア・ボーイ・ライク・ザット/アイ・ハブ・ア・ラヴ』をデュエットするシーンでは、もう感情がグチャグチャになりました」。

「マリアもすばらしかったです。なんてきれいな声なんだろう」と、その圧倒的な歌唱力で桜井を感嘆させたマリア役のレイチェル・ゼグラーは、約3万人もの公開オーディションで見いだされたハリウッド期待の新星。これから製作されるディズニーの実写版『白雪姫』のヒロインにも抜擢されている。

桜井の心に最も強い印象を残したのが、シャークスのリーダーの恋人、アニータ
桜井の心に最も強い印象を残したのが、シャークスのリーダーの恋人、アニータ[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

特徴的な高音が多いマリアの楽曲。登場人物たちがそれぞれに“今夜=トゥナイト”にかける想いを同時進行で歌う五重唱のアンサンブルナンバー「トゥナイト(クインテット)」では、ゼグラーが美しい高音を聴かせてくれる。「最後にマリアが一人で歌うパートがあるんです。私がミュージカルで練習していた時、歌唱指導の先生から『もう最後は悲鳴だから、悲鳴を上げればいいの!』と言われていたところも、難なく、どんどんのびやかに音程が上がっていき、すごくきれいな歌声で、うらやましく思いました」。

マリア役のレイチェル・ゼグラーが高音で歌い上げる「トゥナイト(クインテット)」に注目!
マリア役のレイチェル・ゼグラーが高音で歌い上げる「トゥナイト(クインテット)」に注目![c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

「多様性が謳われるいまの時代だからこそ、強く伝わるものがありました」

また、大きな役ではないが、「ジェッツに入団を希望するエニィバディズもとても重要なポジション」だと桜井は語る。オリジナルにもすでに登場していたエニィバディズは、セクシャル・マイノリティを匂わせるキャラクターであり、この名作がLGBTの描写に関しても時代を先取りしていたことを証明している。「ジェンダーレスというテーマを、彼女が1人で担っていて。多様性が謳われるいまの時代だからこそ、強く伝わるものがあり印象的でした」。

差別や偏見、分断が問題視されるいま、『ウエスト・サイド・ストーリー』が突きつけるメッセージはより強く、より深くなった
差別や偏見、分断が問題視されるいま、『ウエスト・サイド・ストーリー』が突きつけるメッセージはより強く、より深くなった[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

もちろん主人公のトニーも忘れてはならない。演じるのは『ベイビー・ドライバー』(17)に主演し、若手トップスターの地位を築いたアンセル・エルゴートだ。「闘病しているガン患者の男の子を演じた『きっと、星のせいじゃない。』の演技にも、強く心を打たれ泣けました。本作の彼も、まさにトニーだな、と。かわいらしくて、まっすぐで。お芝居であっても本当にきれいな涙を流す方だと思いました」。

エルゴートが歌手としても活動していることを知っていた桜井だが、本作では彼のダンスシーンに目を見張ったという。「こんなに踊れるんだ、ということに驚きました。特に、シャークスとの決闘に沸くジェッツの仲間に、「落ち着け」と呼びかける楽曲『クール』のダンスシーンは、身体能力どうなっているの!?と驚きました(笑)」。

『ベイビー・ドライバー』などで知られる実力派アンセル・エルゴートが演じるトニー
『ベイビー・ドライバー』などで知られる実力派アンセル・エルゴートが演じるトニー[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

「トニーや仲間たち、それぞれの涙を流すシーン、泣き顔のアップが要所に入っていて印象的でした」

61年版の映画も観ていた桜井は、ジェッツとシャークスのメンバーが路上を歩きながら、抗争するアクションをフィンガー・スナップとダイナミックなダンスで表現したプロローグから興奮したという。61年版と本作に感じた違いは、なんだったのだろう。「登場人物みんなが、いろんな葛藤を抱えています。主人公のトニーや仲間の若い子たち、それぞれの涙を流すシーン、泣き顔のアップが要所で入っているのは、すごく印象的でした。61年版の映画でも様々な感情が描かれていました。今回の映画は各キャラクターの葛藤をよりわかりやすく描いていて。改めて発見することも多かったです」。

ヨーロッパ系移民が中心のジェッツ
ヨーロッパ系移民が中心のジェッツ[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

観る者の感情に訴えかける、エモーショナルな表現の巧みさはスピルバーグ監督ならでは。オリジナルでは、トニーが働く店の店主として、ヨーロッパ系移民のドクが出てくるが、今回の映画では、ドクはすでに他界しているという設定。その代わりに、ドクの妻で、プエルトリコ系移民のバレンティーナが登場し、重要な役割を果たす。このバレンティーナを演じているのが、61年版でシャークスのリーダーの恋人であるアニータを演じ、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の助演女優賞をW受賞したリタ・モレノだ。

「リタ・モレノがバレンティーナ役と知った時は、感動で鳥肌が立ちました。彼女が演じることで、さらに重みが加わるんです。ドクの店を継いだプエルトリコ系の彼女が、ジェッツの若者たちを見守っている姿に心揺さぶられました」。


『ウエスト・サイド物語』でアニータを演じたリタ・モレノがバレンティーナ役で再出演
『ウエスト・サイド物語』でアニータを演じたリタ・モレノがバレンティーナ役で再出演[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
桜井玲香
1994年生まれ、神奈川県出身。2011年に乃木坂46の1期生オーディションに合格。グループのキャプテンを務め、2019年に卒業。モデル、俳優として舞台や映画で活躍。代表作は舞台「ダンス・オブ・ヴァンパイア」「フラッシュダンス」、映画『シノノメの週末』(21)など。現在舞台「スラップスティックス」に出演中。4月公演のブロードウェイ・ミュージカル「FLOWER DRUM SONG」への主演が決定。


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