『メリー・ポピンズ』『グレイテスト・ショーマン』『ウエスト・サイド・ストーリー』…名作で彩られたミュージカル映画史を振り返る!
“映像の魔術師”スティーヴン・スピルバーグのキャリアとミュージカル映画の歴史が合体!
こうしたミュージカル映画の長い歴史を背負って立つように誕生したのが、スピルバーグの『ウエスト・サイド・ストーリー』である。その設定、および展開自体は、1961年の『ウエスト・サイド物語』、またその基盤となった、1957年にブロードウェイで開幕した舞台版を受け継いでいる。つまりオリジナルに忠実な仕上がりを、スピルバーグは目指した。キーポイントとなるダンスシーンの迫力や、目を見張るようなダイナミックな振付、それらを捉えるカメラワークのすばらしさなど、スピルバーグの映像の魔術師としてのキャリアと、過去のミュージカル映画が究極で合体したような映像に、誰もが息をのむことだろう。ダンスシーンの進化は、ミュージカル映画が沈滞していた時期の『グリース』などに脈々と受け継がれていたことも、よくわかる。
さらに、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を原案にした、社会の分断が生む愛の悲劇は、時代を超えて心を揺さぶることを、この『ウエスト・サイド・ストーリー』は証明。境遇の違いが障壁となる男女の愛は『美女と野獣』や『オペラ座の怪人』など、そして人種差別の虚しさや多様性の容認は『ヘアスプレー』や『グレイテスト・ショーマン』…と、過去のエポックになった作品のテーマと鮮やかにシンクロする。
こうしてミュージカル映画の歴史と照らし合わせながら観ることで、『ウエスト・サイド・ストーリー』の感動はさらに深く広がり、エンタテインメントとしての興奮と共に、最高の映画体験になることだろう。
文/斉藤博昭
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