一筋縄ではいかない関係性に心揺さぶられる…『カモン カモン』とあわせて観たい“おじさん”映画
親とは異なる絶妙な距離感で存在し、どこかクセのあるキャラクター像で描かれるなどして、たびたびコメディやヒューマンドラマの題材となってきた“おじ”という存在。今回は4月22日に公開された『カモン カモン』をはじめ、おじと甥、姪の関係に思わず心揺さぶられるような作品を集めてみた。
おじと甥の一時的な関係を描く『カモン カモン』
『20センチュリー・ウーマン』(16)などのマイク・ミルズが監督を、ホアキン・フェニックスが主演を務める『カモン カモン』は、家を留守にする妹に代わり、数日間、甥の面倒を見ることになったおじが、初めての子育てに奮闘する姿を描くヒューマンドラマ。
ニューヨークで暮らすラジオジャーナリストのジョニーは、母が死んで以来、疎遠になっていた妹ヴィヴが、別居中の夫ポールを手助けするために数日間家を空けるということで、LAに渡り甥ジェシーの世話をすることに。ユニークで聡明なジェシーに戸惑いながらも、2人はしだいに打ち解けていくが、一方、ヴィヴはポールの具合がなかなか良くならず滞在を延ばすことに。仕事が入っているジョニーは、ジェシーを連れてニューヨークに戻るが、母が恋しくなったジェシーの機嫌が悪くなり、2人の仲はギクシャクし始めてしまう。
本作は、父親になったミルズが子育て中に経験した数々の想定外の出来事にインスパイアされた物語。それゆえに突然姿をくらましてジョニーを焦らせるジェシーの残酷ないたずらや、それに激昂するジョニーなど、うまくいかないひと時も赤裸々に活写。そんな子育ての難しさに頭を抱えながらも驚きに満ちた瞬間に夢中になり、人としてオープンになっていくジョニーと誠実に接する彼に徐々に心を開いていくジェシー、ふたりの距離感の変化が丁寧かつ優しく紡がれていく。
主人公を父親ではなく、子育て経験ゼロのおじにすることで、子育てを通し成長していくという物語の輪郭や2人の関係性がより明確に浮かび上がっている本作。また、一時的な関係だからこそのラストは感動のひと言で、数々の映画祭で賞を受賞していることも納得できる出来栄えだ。