その結末は記憶に残る…白石和彌監督作『死刑にいたる病』や名作『セブン』も!鳥肌もののラストを迎える映画たち
大きなショックを受ける衝撃の結末…『セブン』
稀代のサスペンスの名手、デヴィッド・フィンチャー監督が世界にその名を知らしめた『セブン』(95)は、キリスト教の「七つの大罪」になぞらえた連続殺人事件に翻弄される刑事2人の運命を描く。本作のラストは、サスペンス映画の歴史において“『セブン』以前/以降”に分けられるといっても過言ではないほど、強烈なインパクトを残した。「死ぬまで食べ続けさせる」「拘束して飼い殺し」など、常軌を逸した犯行を繰り返す男ジョン・ドウ(名無しの権兵衛の意)の目的とは?すべてが明らかになった時、大きなショックを受けると同時に、この結末について深く考えさせられてしまう。『死刑にいたる病』の結末も、多くの人が考えを巡らせ、その意味するところに気づいた人はゾッ…とするはず。真意を知りたい人は、ぜひ劇場に足を運んでほしい。『セブン』はそのほかにも、コントラストの強調されたダークな映像美、カイル・クーパーが担当した秀逸なオープニングクレジット、ベテラン&新米の刑事役のモーガン・フリーマンとブラッド・ピットによる名演技など、挙げればキリがないほど新しい時代を切り拓いた魅力にあふれている必見の1本だ。
目に見えていたものがなにもかも信じられなくなる『母なる証明』
最後に、韓流ファンなら絶対に見逃せないのが、『パラサイト/半地下の家族』(19)で非英語作品にして初のアカデミー賞作品賞受賞という快挙を果たした、ポン・ジュノ監督による『母なる証明』(09)だ。「韓流四天王」の一人といわれた元祖イケメン俳優のウォンビンと、韓国で「国民の母」と称された名女優キム・ヘジャが母子役で競演。女子高生殺しの罪で逮捕された一人息子の無実を証明しようと奔走する母親の姿をスリリングに描く。純真無垢で人の影響を受けやすい息子トジュンとそんな彼を過保護気味にかわいがる母親の愛情、静かな町で突如起こった殺人事件に過剰反応する村の人々、女子高生のある秘密…。事件をきっかけに、それらの要素が不穏な方向へ一気に動き始めてしまう。真相が明かされる時、母親の目にはなにが映るのだろうか?白に見えていたものが実は黒であるなど、それぞれの人物像が冒頭と結末でいともたやすくひっくり返ってしまう展開は、『死刑にいたる病』でも同様だ。表面上の顔に騙されず、真実を見抜けるかどうか。白石監督や実力派キャストたちが仕掛ける至高のミステリーに挑んでみてはいかがだろう。
「こわいもの見たさ」の心理をくすぐるショッキングな描写、異常な事件で人間の本性が露わになる結末は、映画ファンを引きつけて止まない。今回ピックアップした作品たちは、観客をドキドキハラハラさせ、最後に待ち受ける“どんでん返し”で強烈な記憶を植え付けてしまう。そんな名作の1本として数えられることになるだろう『死刑にいたる病』の衝撃を、ぜひ劇場で体験してほしい!
文/水越小夜子