“新・山の神”柏原竜二が感じた『バブル』が描くバトルクールと駅伝の共通点…「誰しもが孤軍奮闘しなければならない時がある」
「自分は一人じゃないのだと、それにすごく救われました」
柏原は中学生のころから陸上競技を始め、大学在学中は箱根駅伝に4年連続出場。社会人になってからも社会人陸上競技部に所属し、27歳で現役を引退した。長い期間アスリートとして、大学時代はエースとして活躍してきた柏原は「仕事もスポーツも、誰しもが孤軍奮闘しなければならない時がある」と、ヒビキと自身の経験を照らし合わせた。しかし、ヒビキも柏原もその孤独を救ってくれたのは、ほかでもない仲間だ。
「駅伝の試合で、一度だけメンバーから外れた時があって。その時、同期のチームメイトたちから『お前が外れてくれて1枠空いたよ、ありがとう』と言われたんですよ(笑)。チームのなかには他力本願な人たちもいたけれど、同期だけはライバル意識を持ってくれていた。自分は一人じゃないのだと、それにすごく救われました」。
「マコトとシンの立ち振る舞いは年下と接するうえでのベストアンサーだと思います」
続いて、アスリート目線で「ブルーブレイズ」のリーダーであるカイについても言及。物語前半は、突出した才能を持ちながら人との関わりを避け、チームで孤立状態のエース、ヒビキと折り合いのつかない場面もあるのだが、「このメンバーをまとめるのは大変そう」と笑いながら明かした。
「最初、カイはヒビキのことをちょっと嫌だなと思っているし、わだかまりがあるように描かれています。だけど、リーダーとして優先すべきは“チームが勝つこと”だと捉えているので、その信念のもと行動するカイはすごくよかったです。エースを活かしつつ、このチームが勝つためになにをすべきかちゃんと考えているなと思いました」。
さらに、ヒビキたち「ブルーブレイズ」のメンバーを支えながら泡(バブル)の現象を調査する女性マコト(声:広瀬アリス)や、元プレイヤーでもあり、少年たちのパルクールバトルを見守るアニキ的存在のシン(声:宮野真守)には「大人はやっぱりこうでないと…」と、自身の年下に対する接し方と比較し、感嘆した。
「僕自身、30歳を過ぎてから年下の人たちと接する機会が年々増えているのですが、いろんな経験値が蓄積されてくると、その経験値をもとにあーだこーだと言いたくなります。それに比べてマコトもシンも若者に選択を委ねていて、助けるところは助けていました。すごく大人ですよね。2人の立ち振る舞いは年下と接するうえでのベストアンサーだと思います。“人の振り見て我が振り直せ”じゃないですけど、本作から考えさせられることが多いなと思いました」。
「キャラクター同士の関係性がウタを通してどのように変化していくのか」
加えて、「ウタかマコトなら、マコト派です!おせっかいなところがいいですね」とマコトの魅力も熱弁。そして最後に、アニメファンである柏原が思う『バブル』の見どころを教えてもらった。
「泡と海で埋め尽くされた東京は荒廃しているのにとても鮮やか。そんな独特の世界観に注目して観てほしいです。また、キャラクター同士の関係性がウタを通してどのように変化していくのか、バラバラだったチームがどのように意思疎通できるようになっていくのか、ひとりひとりの成長が描かれているのも見どころだと思います」。
取材・文/阿部裕華
1989年生まれ、福島県出身。中学時代から陸上競技をはじめ、東洋大学陸上競技部に所属。箱根駅伝に出場して3度の総合優勝に貢献。4年連続5区区間賞を獲得した。卒業後実業団へ進み、全日本実業団対抗駅伝に出場。2017年に現役を引退。現在はスポーツ活動全般への支援、地域・社会貢献活動などを担当し、幅広く活動している。