ウルトラファンなら冒頭2分で心掴まれる『シン・ウルトラマン』、リアルなエピソードが刺さる『ハケンアニメ!』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、庵野秀明×樋口真嗣が新解釈で描く空想特撮エンタメ作、“覇権アニメ”の座を巡りアニメ作りに魂を燃やすクリエイターたちの姿を映したドラマ、立川志の輔の創作落語を豪華キャスト集結で映像化したコメディの、喉を唸らせる3本!
マニアから新規のファンまで楽しめる娯楽映画…『シン・ウルトラマン』(公開中)
日本が世界に誇る“ウルトラマン”を『シン・ゴジラ』(16)の庵野秀明(企画、脚本)と樋口伸真嗣(監督)のタッグがどう現代によみがえらせるか…、それだけでも期待が高まる『シン・ウルトラマン』。ウルトラファンなら冒頭2分で心をつかまれ、『シン・ゴジラ』にハマった人ならリアルな現代に現れた禍威獣(=怪獣)と外星人(=宇宙人)と人類との戦いを描くシミュレーション・ムービーに興奮し、「エヴァンゲリオン」ファンなら終盤の展開に驚愕するだろう。ちょっとしたセリフや見せ方などオリジナルへのリスペクトとオマージュにあふれている。ファンがネタにしていたツッコミへの解釈、個性的なヒロイン長澤まさみ、真似したくなる山本耕史のメフィラスなど見どころ満載で、マニアから新規のファンまで楽しめる娯楽映画だ。“「百聞は一見に如かず」、私の好きな言葉です。”(ライター・竹之内円)
鮮やかなアニメパート×お仕事ドラマのインパクトが大きすぎる…『ハケンアニメ!』(公開中)
いいものをつくりたい。なにかをつくろうとする誰もが抱くこの気持ちに、恥ずかしいほどまっすぐに向き合った作品だ。初監督作品に挑む斎藤瞳(吉岡里穂)、天才アニメ監督、王子千晴(中村倫也)が、同時間帯に放映される「裏番組」同士でどちらがよりヒットするかの“覇権”を争うストーリー。作中では、二人の作るアニメが実際のアニメスタジオと声優によって制作され、随所に挿入されている。瞳と千晴の対照的な作風をよく表したアニメパートが映像に新たな魅力を与えているのはいうまでもない。が、同時に強く推したいのが「お仕事もの」としての魅力だ。瞳がアニメ業界に飛び込むにいたるエピソードはあまりに生々しく、アニメの主人公に憧れたかつての子どもたちは否応なしに過去の記憶をえぐられる。それでも好きだから、届けたいものがあるから、「いいものをつくりたい」。瞳や千晴の目を通して、自分の半生をかえりみる時間も与えてもらった。(ライター・藤堂真衣)
歴史再発見。思わず「へえ!」と唸ってしまう、驚きいっぱいの現代&時代劇…『大河への道』(公開中)
”身近すぎてよく知らない”ものって意外と多い。たとえば「地図」はどうだろう。日本地図を初めて作ったのは伊能忠敬というのは誰もが知る常識だが、しかし実はこの人、地図完成の3年前に亡くなっていたのだとか。ならば完成までの道のりには一体どんな秘話が隠されていたのか──。立川志の輔の創作落語を原作にしたこの映画は、地域振興のために郷土の偉人、伊能忠敬を大河ドラマとして採用してもらおうと発案する市役所チームの奮闘と、江戸時代に伊能の弟子たちが師匠の死を隠して地図の完成を目指す時代劇という二つの主軸を携えて駆け抜ける。中井貴一、松山ケンイチ、北川景子といった存在感のある面々が一人二役で現代劇と時代劇を巧みに演じ分け、コミカルな掛け合いと筋書きで大いに笑わせつつ、最終的にたどり着くのは、200年前にあれほど精緻な地図を描き上げた偉業への純粋な驚きと畏敬の念。まさに1粒で3種類のおいしさがこみ上げてくる快作だ。(映画ライター・牛津厚信)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/サンクレイオ翼