人魚のような水泳コーチに扮した綾瀬はるかの包容力…『はい、泳げません』など“善き指導者”映画たち
スパルタ指導のダンスコーチが潜ませる胸アツな愛情…『チア☆ダン』、『フラガール』
一方、ビシバシと鋭い言葉で叱咤激励するスパルタ指導者が登場するのが『チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話』(17)、『フラガール』(06)の2作品。『チア・ダン』は福井県立福井商業高校のチアリーダー部が全米チアダンス選手権大会で優勝した実話がベース。テレビドラマおよびコミカライズ化もされた青春ムービーだ。
高校に入学した友永ひかり(広瀬すず)は、サッカー部の孝介(真剣佑)を応援するためチアダンス部に入部する。“全米制覇”という高い目標を掲げる顧問の早乙女薫子(天海祐希)によるスパルタ指導に反発しながらも、切磋琢磨するひかりらチアダンス部は、わずか3年で全米大会で優勝を果たす。物語の終盤に明かされる、無慈悲にも見えた早乙女の指導に隠された深い愛情にジーンとさせられる。
そして常磐ハワイアンセンター(現:スパリゾートハワイアンズ)の誕生秘話を描いたのが、第30回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞した『フラガール』。
フラガールとなる炭鉱娘を蒼井優、山崎静代(南海キャンディーズ)らが演じたほか、松雪泰子が都会から来たダンス講師の平山まどかに扮している。叱られながらも必死にダンスを修得しようとするフラガールたちとまどかの絆の深さが胸アツな一作だ。
人柄が魅力的な茶道の先生&カヌーコーチ…『日日是好日』、『水上のフライト』
『日日是好日』(18)と『水上のフライト』(20)は、指導者の魅力的な人柄が印象的な2作品。大森立嗣監督が黒木華、樹木希林、多部未華子の共演で描いた『日日是好日』は、森下典子によるエッセイ「日日是好日 『お茶』が教えてくれた15のしあわせ」を原作に、茶道とともに歩んだ20余年の歳月がつづられたしみじみと心に響くヒューマンドラマだ。
真面目で不器用な典子(黒木)は、母親のすすめで20歳の春、従姉妹の美智子(多部)と茶道教室へ通うことに。最初は形式的な作法ばかりと思っていた茶道が、次第に人生を共に歩む心の拠り所となっていく様子が丁寧につづられていく。2人の茶道の師となる武田先生(樹木)の発する言葉の数々が、人生の経験を積むうちにじんわりと理解できるようになっていくのが感慨深い。そんな人生の師でもある武田先生を樹木がキュートに体現している。
そして映像クリエイターの発掘と育成を目的とする「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM」発の青春ドラマが『水上のフライト』(20)。『461個のおべんとう』(20)の兼重淳監督による、実在するパラカヌーの選手をモチーフとしたオリジナルストーリーだ。
交通事故によって走り高跳びで世界を目指すという夢を断念せざるを得なくなった遥(中条あやみ)は、パラカヌーに出会ったことで新たな夢へと邁進することに。そんな遥を熱血指導するのがコーチの宮本浩(小澤征悦)。様々な事情を抱えた生徒たちに明るく接する“昭和の男”を彷彿とさせる朗らかな人柄が、作品全体を明るく照らし、元気がもらえる作品となっている。
単なる先生と生徒という関係だけでなく“人生の師”にもなる素敵な出会いも描かれた実話ベースの“希望と感動の物語”たち。『はい、泳げません』と一緒に、彼らの深い絆と挑戦を見届けよう。
文/足立美由紀
※高橋秀実の「高」は「はしご高」が正式表記