次回作は「また別次元の作品に」。原泰久&佐藤信介監督が語る、山崎賢人の“信らしさ”と「キングダム」の未来
「山崎賢人さんは、もはや信そのもの。どハマり役」(原)
――シリーズを通して信を演じている山崎さんは、完成報告会で「信を演じている時は、無限にパワーがあふれてくるような感覚でいられる」とおっしゃっていました。
原「どハマり役ですよね。現場に伺っても、山崎さんはみんなから愛されていて『信だなあ』と感じます。そしてとにかく足が速くて、馬力がありますよね。戦場へ駆け出すシーンの撮影で、演出上では“最初は8割くらいの力で走って、あるタイミングで加速して10割で走る”となっていたところ、山崎さんはいきなりスタートから10割で走ってしまったらしくて(笑)。走りながら『これはヤバい』と思ったようなんですが、加速ポイントが来た時に『オラァ!』と気合を入れて、そこからさらに加速したそうなんです。それはもう、信そのものですよね(笑)。そういったエピソードがたくさんあるんですよ」
佐藤「あはは!そうなんです。最初から10割の力を出しちゃったんです。カメラが追いつくのが大変でした。前作に比べてガシッとした体型になるよう、身体づくりもしてくれました。今回も撮影に入る何か月も前からアクション練習に入ってくれて、撮影初日に現場に来た時には“山崎賢人に会っている”という感じはしなかったですね。“お、信が来たな”と感じました」
原「本作では、信が馬に乗ったアクションもすばらしかったですね。ドキドキしました。後半には信が戦車に囲まれるシーンがあるんですが、あの場面の迫力もすごかった。どうやって撮っているんだろうと思いました」
佐藤「本作は“360度にわたって『キングダム』の世界観を描ききる”ということをテーマにして取り組んでいましたが、そんななかでもやはり戦車戦が今回のクライマックスになると思っていました。現代のテクノロジーをふんだんに使って撮った箇所もあるし、力技のようにアナログで実際に撮った箇所もありと、あらゆる手を尽くして撮影に臨んで。コロナ禍という大変な時期の撮影でしたので、今回はいつも以上に緻密に計画を立てることが必要でしたが、その計画性が十分に活かされたシーンになりました」
――大変な状況だからこそ、チームワークがより強固なものになったこともありますか?
佐藤「それは本当に感じています。スクラップアンドビルドと言いますか、“計画を作り上げては叩き壊す”といったような状況もありました。『この方法で撮れる、このロケ地でできる』と思っていたものができなくなったりすると、みんなで臨機応変にそれに対応しなければいけません。でも変更を余儀なくされた時に、質の悪いものになっては絶対にいけないわけです。『そのおかげで、むしろよくなったじゃん!』というものにするために、みんなで知恵を絞っていました。そう思えるところまで突き詰めることができたのが、本作だと思っています」
「羌瘣の『トーン、タンタン』のリズムは、なかなか口では説明できなくて…」(原)
――本作では信と、原作でも人気キャラクターである女剣士、羌瘣との出会いが描かれます。信と羌瘣のある場面は、映画オリジナルのシーンとなります。原先生は、そのシーンの脚本を担当されていますが、どのような想いを込められたのでしょうか。
原「“蛇甘平原の戦い”を描くとなると、ほぼ全編、戦場が舞台の映画になってしまうわけですよね。より幅広い方に観ていただくためにも、プロデューサーさんから『原作では、“蛇甘平原の戦い”の後に出てくる羌瘣のエピソードを、前に持ってくることはできますか?』というお話がありました。ドラマ性の強い場面をプラスするということですね。僕も『いいかもしれませんね』と返したんですが、映画のなかにきちんと組み込むためには、信と羌瘣の繰り広げるドラマにきちんと起承転結をつける必要があります。そのまとめ方は気になるところでもあったので、『そこの脚本は、僕に書かせてもらえませんか』とお願いをしました。闇のなかにいた羌瘣が信と出会い、過去を打ち明けて、信に真剣に怒ってもらうことで、少しずつ変わっていく。そうやって、進むべき道を見つけていく羌瘣を描きたいと思っていました」
――羌瘣役を演じるのが清野菜名さんだと聞いた時は、どのように感じましたか?
原「清野さん以外にはいないだろうなと思うくらい、ぴったりだと感じました。まずアクションができないといけないというところで、だいぶ演じられる方が限られますよね。清野さんのアクションの評判は聞いていたので、『そのキャスティングで大丈夫だと思います』とお返事をしました。完成作を観たら、アクションはもちろん、演技もすばらしかったですね。セリフがそれほど多くはないなかで、感情が変わっていく羌瘣を見事に表現されていました。後半で羌瘣が前向きな表情を見せるシーンは『ああ、道が見えたんだ!』と感じることができる最高の演技でした」
――羌瘣が戦いの際に披露する「トーン、タンタン」というステップは、漫画では、読者の皆さんがそれぞれのリズムで読まれていたと思います。実写でどのように描かれるのか、気になっていました。
原「そうなんですよ!漫画には音がないので、映画化に際して製作サイドの方々からも『トーン、タンタンのリズムって、どんな感じなんでしょう?』と聞かれました。でもなかなか口では説明できなくて…」
佐藤「あはは!」
原「何回か自分で声を発して録音をしてみたんですが、全然うまくいかなくて。『遠くから聞こえてくる、お祭りの音のような感じです』、『催眠術をかけるような感じです』といろいろなことを言いつつ、丸投げさせてもらいました(笑)。完成作を観て、すごいなと思いましたよ。漫画では、『そんなことは実際にできないだろう』と思うような動きも描けてしまうので、僕も実写でやる羌瘣のアクションってどうなるんだろうと思っていたんです。でも本当にかっこよかったし、“強い”という説得力のある剣技でした」
佐藤「羌瘣のアクションの性質とはどんなものなのだろう、巫舞とはどんなものなのだろうと、アクション監督の下村(勇二)さんと話し合い、清野さんとも練習を一緒にやりながら、アクションを組み立てていきました。清野さんのアクションは、本当にすごかったです。もはやアクション部の一員といった感じでしたね。こちらの扱いとしても『大丈夫ですか?』と聞くのではなく、『行ってみよう!』と声をかけ、清野さんも『はい!やります!』と頼もしい言葉をくれるんです」