古川琴音が「映してもらってよかった」と感じた“泣き顔”。演技に誠実な女優が、撮影現場で得たものとは?

インタビュー

古川琴音が「映してもらってよかった」と感じた“泣き顔”。演技に誠実な女優が、撮影現場で得たものとは?

古川演じる泉は、“人気デザイナーを母に持つ”という設定であり、眺めの良いオシャレな邸宅に暮らしている。「藤沢や湘南のあたりで撮影していたんですけど、泉や真織の自宅としてお借りしたおうちがすごく素敵だったんです。丘の上に建っているので、窓から見える景色もすばらしくて」。

真織の親友、泉役を務めた古川琴音。ファッションにも注目してみて
真織の親友、泉役を務めた古川琴音。ファッションにも注目してみて[c]2022「今夜、世界からこの恋が消えても」製作委員会

ファッショナブルな私服姿やアレンジした制服の着こなしも目を引くが、なかでも泉が最初に登場するシーンの着こなしが、古川のお気に入りなのだとか。「上はジャージっぽい服なんですが、デザインがちょっと変わっていて。制服のスカートと合わせると、ものすごく可愛いんです。泉ちゃんと違って実際の学生時代の私は優等生タイプだったので(笑)、ちゃんと校則を守ってました。スカートの丈も、ちゃんとひざ丈までありました。いまとなっては、ちょっともったいなかったかなと思います(笑)」といたずらっぽい表情をのぞかせた。

「自分のことは一旦脇に置いといて、相手の反応に集中していると、思いがけない感情が湧き上がってきたりする」

本作では、一度寝ると失われてしまう真織の前日の記憶を「翌日の真織」に伝えるために、“日記”が重要なアイテムとして登場する。古川自身は「日記は普段つけていない」というが、スマホのカメラやボイスレコーダーを記録媒体として活用していることを教えてくれた。

患っている病気を隠すため、真織は透から聞いたことを常にメモしている
患っている病気を隠すため、真織は透から聞いたことを常にメモしている[c]2022「今夜、世界からこの恋が消えても」製作委員会

「台本を覚える時は、ボイスレコーダーに自分の声で全部吹き込んで、歩きながら聴くようにしています。自分のセリフだけじゃなくて相手のセリフも入れますし、ト書きも重要な部分は入れたりしています。何回も聴いて全体の流れを予習して、最終的に相手のセリフを聞いて、自分のセリフが出てくるかどうかをテストするような感じです。あとカメラは、実家で飼っている猫の写真を撮るのに使うことが多いです」


近年、映画やドラマのみならず、CMや舞台にも活躍の場を広げる古川だが、濱口竜介監督の『偶然と想像』(21)の現場で学んだことが、役への向き合い方にも大いに影響を及ぼしているという。「濱口監督から教えていただいたことはたくさんありますが、一番大きかったのは、準備してきたものを現場で“手放す”ことの大切さを知ったこと。演じる上での優先順位が変わったというか、自分のセリフをどう言うかということよりも、いま目の前にいる相手がどういう反応をして、なにを私に伝えようとしているのかを感じ取ることに集中するようになりました」。

エスカレーターを行き交っての撮影は、まるで『偶然と想像』第3話のワンシーンみたい?
エスカレーターを行き交っての撮影は、まるで『偶然と想像』第3話のワンシーンみたい?撮影/垂水佳菜

「自分のことは一旦脇に置いといて、相手の反応に集中していると、思いがけない感情が湧き上がってきたりするんです。『台本を読んだ時は、ここで私は泣くと思ったけど、あ、これは耐えなきゃダメだ』とか。逆も然りですよね。『この言葉に反応するつもりはなかったけど、この状況で目の前の人からこの言葉を聞くと、こみ上げてくるものがあるなあ』とか。以前よりライブ感を強く感じられるようになりました」

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