『アベンジャーズ』公開10周年、アイアンマンにキャプテン・アメリカ、ソーら初期メンバー6人の足跡を辿る
愛する“家族=アベンジャーズ”を常に支えてきた、ブラック・ウィドウ
アベンジャーズのメンバーで、アイアンマンに次ぐ古株となるのが、スカーレット・ヨハンソン演じる、“ブラック・ウィドウ”のコードネームで活躍するナターシャ・ロマノフ。『アイアンマン2』でS.H.I.E.L.D.のエージェントとして初登場し、『アベンジャーズ』ではロキをも翻弄するやり手ぶりや、生身の人間ながらもチタウリを相手に高い戦闘能力を披露。『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(14)では、ヒドラに乗っ取られたS.H.I.E.L.D.からの逃亡を図るキャプテン・アメリカをサポートするなど、MCUにおける諜報という暗部の世界観を補強する役目を担ってきた。
『エイジ・オブ・ウルトロン』ではバナーとの恋愛関係も描かれ、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)では、ヒーローを政府が管理する「ソコヴィア協定」推進派のアイアンマン側に付きつつ、最後にはキャプテン・アメリカに協力するなど、スパイという立場をうまく使った影の立役者としての存在感を示してきた。
そして、『エンドゲーム』では世界を元に戻すための鍵となるソウルストーンを手に入れるため、自らの命を犠牲に…。普段は言葉や態度には出さないものの、アベンジャーズを自分の家族だと信じ、彼らを守ろうと行動した姿が強く印象に残った。アベンジャーズのメンバーたちは、どこかしら我が道を進んでいるのに対し、ナターシャは冷静な視点でチーム全体を俯瞰する役回りを担ってきたと言えるだろう。
ナターシャの唯一にして最後の主人公作品として製作された『ブラック・ウィドウ』(21)は、『シビル・ウォー』と『インフィニティ・ウォー』の間に位置する物語であり、かつて一緒に暮らした疑似家族との絆、これまで描かれなかった彼女の過去が語られている。ちなみに、ナターシャが『インフィニティ・ウォー』で着ているベストは本作に登場する妹エレーナからもらったものであり、『エンドゲーム』序盤でナターシャの髪の色が金髪なのも彼女を意識したものだと言われている。そうした要素を基に作品を見直すことができるのも、MCUならではのおもしろさだ。そして、積み上げられてきたナターシャの遺志は、これからはエレーナに引き継がれていくのだろう。
家族想いの面も印象的だった弓使い、ホークアイ
アベンジャーズ初期メンバーのなかでは比較的出番が少ないながら、もっとも日常を含めた内面が描かれた人物と言えば、ジェレミー・レナー演じるクリント・バートン=ホークアイ。初登場は『マイティ・ソー』のわずかなシーンで、本格的な登場は『アベンジャーズ』から。しかし、残念ながら早々に、ロキのマインドコントロールによって操られてしまい、物語の前半は敵としてその戦闘能力の高さを披露することに。後半からは正気を取り戻し、アベンジャーズに合流。前半の憂さを晴らすかのように人間離れした正確無比な弓矢の腕を見せつける。『エイジ・オブ・ウルトロン』では妻子がいることが明かされ、行き場をなくしたアベンジャーズのメンバーを匿い、新たに仲間に加わった悩めるワンダを導くなど、ヒーローたちのなかでは常識的な考えを持つ人物として描かれてきた。
一度はアベンジャーズから脱退したものの、『シビル・ウォー』ではキャプテン・アメリカのために復帰し、国家に反逆する側についたとされて収監されてしまう。その後、家族のために司法取引に応じてヒーロー活動を控えていたため、『インフィニティ・ウォー』には未登場だったが、サノスの“指パッチン”によって自分以外の家族は消えてしまい、自暴自棄になったクリントは、“ローニン”を名乗って世に蔓延る悪人を粛清して回っていた。ナターシャの働きかけによってアベンジャーズに戻ってきた彼は、かつての相棒同士でソウルストーンを手に入れようとするが、目の前で彼女を失ってしまう。
『エンドゲーム』後は、ドラマシリーズ「ホークアイ」に主役として登場。ヒーローを引退し、家族とニューヨークに訪れていたクリントは、かつてローニンとして活動していたことが影響を与えている事件に遭遇。闇社会を巻き込む戦いのなかで、クリントは自分に憧れ射手としての腕を磨いてきた少女、ケイト・ビショップと出会い事件を解決し、彼女に“ホークアイ”の愛称を譲るまでの活躍が描かれた。
初期メンバー6人のうち、トニーとナターシャは死亡、スティーブとクリントは引退しており、現在残っているのはソーとバナーの2人のみ。寂しい限りではあるが、改めて10年という月日を振り返ると、そうした変化が訪れたことにも納得できる。世代交代が進むアベンジャーズには、今後どのような変化が待っているのだろうか?受け継がれた彼らの意思がどのように開花するのかも含めて、MCUの今後の展開に期待したい。
文/石井誠