【連載】「MINAMOの話をきいてミナモ?」 第6回 めくるめく映画の中のインテリアと甘い誘惑
『ティファニーで朝食を』のせいで皮のラグしか買えない呪いにかかった
誰が考えたのだろう。バスタブを半分にぶった切ったソファでお馴染みの『ティファニーで朝食を』(61)の主人公ホリーの部屋も私の大好きな部屋の一つだ。階段みたいに積み重ねられたトランク、大きなドレッサーの前に散りばめられたジュエリーのようなガラスの瓶たち、極め付けにゼブラのラグ。このゼブラのラグは私の心臓を見事にブッ刺した。私はこの映画に出会ってしまったせいで、どんなラグを見ても皮のラグしか買えない呪いにかかった。今まで一人暮らしを始めてから買い換えるタイミングはいくらでもあったのに、皮のラグばかり敷いて、今のラグは5代目になる。
散らかってはいるが、必要なものしか置いていないリビングや冷たそうな黒のアイアンベッドには、オードリー・ヘップバーン演じるホリーの孤独が垣間見える。それがまたいいのだ。映画は至る所で主人公の心情が表現されていることがある。それはインテリアにも。それも映画を見るうえでの楽しみの一つである。ちなみにホリーになってみたい人はネットでコスプレが1万円以内で手に入る。私はいつかあの耳栓とアイマスクとシャツで眠りにつきたい。そして目覚めたらクロワッサンを食べるのだ。こんな妄想もお手のものである。
『グッバイ・ゴダール!』の家の内装そっくりそのままでフランスに住みたい
スタンリー・キューブリックの映画に出てくるインテリアは毎度、革新的で現代アートのような空間ばかりだ。その中でもピカイチなのが『時計じかけのオレンジ』(71)。この映画に出てくる近未来スタイルなインテリアに恋して一時期「あんなよくわからない家具どこにも見つかんねえよ」と半分キレながら必死に探し回ったのはいい思い出である。「ミッドセンチュリーモダン」というカテゴリーを知ったのは後々で、そんな言葉を知らなかった私はインターネットで「レトロ、近未来、家具」なんて陳腐な調べ方をしていたのが懐かしい。必死に探した赤いオットマンを置いてみたが、ただのピアノの丸椅子と化した。この映画の壁紙や家具の奇抜な色使いは、誰にも真似できない。
『グッバイ・ゴダール!』(17)。この映画はジャン=リュック・ゴダールの妻、アンヌ・ヴェアゼムスキーが2人の生活をつづった自伝小説の映画化作品なのだが、この家、フレンチインテリアの中で私が一番住みたい家である。上品な白いモールディングの壁にヘリンボーンの床。淡いブルーのソファに置かれている、青、赤、黄の小ぶりなクッション。たくさんの色が存在するように思えるが、実は決められた色しか使われていない。よってごちゃごちゃ感もなく、家全体の色彩が非常に美しい。いつかこの家の内装をそっくりそのまま造ってフランスに住むのが夢である。あの可愛いキッチンもまるごと。そして青いシーツを敷いたあのベッドでいい夢を見て、裸んぼで恋人を迎えたい。
京都府出身。2021年6月にSOFT ON DEMANDよりAV女優としてデビュー。趣味は映画&レコード鑑賞、読書。
YouTubeにて「MINAMOジャンクション」を配信中。
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