『ヒメアノ〜ル』の狂気から『前科者』の魂の熱演へ…俳優、森田剛の歩みを振り返る
2021年11月1日をもって、26年にわたるグループ活動に幕を下ろし、解散の道を選んだV6。それから1年余り。本稿では、今年1月に劇場公開され、8月にBlu-ray&DVDが発売になった映画『前科者』(22)で、まさにヘビー級の渾身の演技で観る者の魂をブルブル震わせている俳優、森田剛にフォーカス。
実に6年ぶりの劇場作品出演とはいえ、すでに『ヒメアノ〜ル』(16)で我々は度肝を抜かれ、アイドル(当時)というイメージや先入観は完全に吹き飛ばされていた。それでも本作で森田が見せる、あまりに過酷な運命を背負わされた元受刑者、工藤の気持ちが沁み出してくるような表現力、その磁力の強さに、改めて驚嘆せずにはいられない。ここへ至る森田の“役者魂”の足跡を追ってみた。
V6のメンバーと共演した「PU-PU-PU-」や将棋ドラマ「月下の棋士」など話題のテレビドラマに出演
森田が演技を初披露したのは、1994年に15歳で出演したドラマ「半熟卵」での、主人公一家の三女のボーイフレンド役。そして初主演は、ドラマ「ミラクル仮面高校生」(1995年放送)で演じた、気弱なイジメられっ子が金の仮面をつけるとヒーローになる男子高校生役で、当時16歳の森田の、初々しさが印象に残る。カミセンことComing Century(森田剛・三宅健・岡田准一)が主演を務めた「PU-PU-PU-」(1998年放送)も、人気の一作。いまや時代を感じさせる言葉だが、文字通りプータロー3人の恋と友情、自分探し、そして家族を描いた青春ドラマでの、やんちゃさを感じさせる若かりし姿が眩しい!
2000年には将棋ドラマ「月下の棋士」にも主演し、伝説の棋士の孫がプロ棋士、そして名人を目指していく成長譚を体現。原作漫画からの名言も話題になった。一方、飯テロ系ほっこりホームドラマ「ランチの女王」(2002年放送)では、主要キャストでないのに、ざっくり爪痕を残している。凶暴でキレやすい、竹内結子演じるヒロインの元カレ役で後半から登場した森田。“本気で怖い!”と評されながら、最終回で流した涙で、視聴者の記憶に長く残ることに。森田23歳、すでにこの作品で、その後の役者魂の片鱗をのぞかせている。
舞台俳優としての存在感を発揮!
一方、2005年に劇団☆新感線の舞台「荒神~AraJinn~」で主演を務めて以降、一気に舞台俳優としての存在感も高めていった。2008年には、いのうえ歌舞伎☆號「IZO」では主役の岡田以蔵を演じ、寺山修司の戯曲を蜷川幸雄が演出した「血は立ったまま眠っている」(2010年上演)にも主演。主役の溝口を演じた宮本亜門演出の「金閣寺」(2011~12年上演)では、ニューヨークの舞台にも立つことになった。2014年になると、英国ローレンス・オリヴィエ賞を7部門受賞した話題作を日本オリジナル舞台として上演した「夜中に犬に起こった奇妙な事件」、藤沢周のベストセラー小説を行定勲が演出した「ブエノスアイレス午前零時」など、この頃は年に2本、主演舞台に立つという活躍ぶりだった。