“指輪”の誕生にヌーメノールの繁栄と崩壊…サウロンの動向で予想する「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」の展望
ベストセラー作家、J・R・R・トールキンが生みだした「指輪物語」と「ホビットの冒険」。長きにわたって愛され続けるこれらの傑作ファンタジーは、鬼才、ピーター・ジャクソン監督によって「ロード・オブ・ザ・リング」&「ホビット」三部作として映画化もされたが、実はそこで描かれる物語はトールキンによって創造された叙事詩のほんの一部でしかない。天地創造からエルフや人間、ドワーフら様々な種族の誕生、善と悪との壮絶な戦いの数々など、何千、何万年にもおよぶ歴史が紡がれている。
Amazon Prime Videoで配信開始になった「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」は、この世界における“第ニ紀”と呼ばれる時代を映像化したドラマシリーズ。現時点で配信されたのはエピソード4までで先読みも難しいが、シリーズにおける重要キャラクターであり、物語の舞台である“中つ国”を暗黒で包み込む“冥王”サウロンにフォーカスすることで、ドラマ版の今後の展開について考察してみたい。
炎の目のような象徴的な姿で描かれていた「ロード・オブ・ザ・リング」三部作のサウロン
まずは、サウロンについて映画版での描かれた方を振り返っておきたい。世界を統べる“一つの指輪”を生みだし、その力を使って中つ国での勢力を拡大させていたサウロン。第1作『ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間』(01)の冒頭には、冥王が率いる闇の軍勢に対し、人間とエルフの連合軍が立ち向かった“最後の同盟の戦い”が描かれている。戦局を優位に進める連合軍の前に、黒い甲冑を纏ったサウロンが登場。巨大なメイスで兵士たちを吹き飛ばし、人間の王であるエレンディルも打ち倒す。しかしその時、死んだ王の折れた剣を手に取った王子、イシルドゥルによって、指輪をはめた指を切り取られ、力を失ったサウロンは消滅し、闇の軍勢も崩壊することに。
ところが、サウロンの邪悪な魂は指輪の中に息づいており、イシルドゥルが指輪を破壊しなかったために悪が完全に滅びることはなかった。それから約3000年の間に、指輪はのちに討ち死にしたイシルドゥルの元を離れ、ゴラムから13人のドワーフと冒険に出ていたホビット族のビルボ、彼の養子のフロドへと持ち主が移っていく。その間にもサウロンは、少しずつ力を取り戻しながらモルドールで軍備を増強し、“指輪の幽鬼”ナズグルに命じて本格的に指輪の捜索に乗りだしていく。劇中での冥王は、三部作全編にわたって炎に縁取られたまぶたのない目のような姿で描かれ、白の魔法使いであるサルマンも味方に引き入れるなど、中つ国を再び恐怖で支配しようと配下の者を使って暗躍していた。
“ネクロマンサー”と呼ばれていた「ホビット」三部作でのサウロン
「ホビット」三部作には、徐々に力を取り戻しつつあるサウロンが登場し、正体を隠して“ネクロマンサー”と呼ばれている。ドル・グルドゥアの廃墟に潜んで軍を組織し、オークの首領であるアゾグを使って自由の民への攻撃を行おうとしていた。本作でも形ある存在ではなく、黒い霧や炎のような姿で描かれており、怪しい動きを察知してやって来た灰色の魔法使い、ガンダルフをその強大な力で圧倒している。ちなみに、劇場公開版に未公開シーンを加えて再編集した“エクステンデッド版”には、故郷を追われたドワーフたちのリーダー、トーリンの父であるスラインをドル・グルドゥアに幽閉しており、ガンダルフと脱出しようとする彼を取り込んでしまうシーンも確認できる。