『アイ・アム まきもと』『フォレスト・ガンプ』『ビッグ・フィッシュ』…愛すべき変わり者に心揺さぶられる名作9選 - 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『アイ・アム まきもと』『フォレスト・ガンプ』『ビッグ・フィッシュ』…愛すべき変わり者に心揺さぶられる名作9選

コラム

『アイ・アム まきもと』『フォレスト・ガンプ』『ビッグ・フィッシュ』…愛すべき変わり者に心揺さぶられる名作9選

前へ突き進む主人公の“夢中”を応援したくなる『コーダ あいのうた』『博士と彼女のセオリー』

最後の仕事ということもあり、牧本は亡くなったばかりの蕪木という老人(宇崎竜童)の遺族を捜すことに情熱を傾けるが、なにかに夢中になっている不器用な主人公を応援したくなるのは、優れた人間ドラマの常。第94回アカデミー賞で作品賞ほか3部門に輝いた『コーダ あいのうた』(21)は、耳の不自由な家族を支える使命感に縛られながらも歌の才能を伸ばしたい、一家で唯一の健常者である女子学生の奔走が描かれた。牧本の場合は、縛られているものがあるとすれば公務員という立場。上司に皮肉を言われながらも“最後のおみおくり”を完遂しようとする姿は、やはり応援したくなってしまう。

健常者の少女と、耳の不自由な家族の物語『コーダ あいのうた』
健常者の少女と、耳の不自由な家族の物語『コーダ あいのうた』[c]Everett Collection/AFLO

実話に基づく『博士と彼女のセオリー』(14)は世界的な物理学者、スティーヴン・ホーキング博士の若き日を描いているが、これもまた情熱が重要な要素となる。終わりのない病と闘いながらビッグバン理論を築いた天才。これに比べると、牧本の“おみおくり”は世界を動かすようなものではない。だが、亡くなった人1人1人と真剣に向き合い、小市民なりに好奇心を燃やし、遺族捜しに東奔西走する。その人並ならぬ情熱が、観る者の心を震わすのだ。

『博士と彼女のセオリー』で、スティーヴン・ホーキング博士役のエディ・レッドメインはアカデミー賞主演男優賞に輝いた
『博士と彼女のセオリー』で、スティーヴン・ホーキング博士役のエディ・レッドメインはアカデミー賞主演男優賞に輝いた[c]Everett Collection/AFLO


“旅”の新しい出会いで世界が広がる『ビッグ・フィッシュ』『レインマン』

牧本は遺族捜しのささやかな旅のなかで、蕪木と関わりのあった様々な人たちに出会っていく。呑み屋を切り盛りする訳ありの女将、故人のケンカっ早い性格を笑いながら語るかつての同僚、故人を命の恩人と語る老人など。牧本が出会う人々は、どこにでもいるフツーの人々だが、どこかユニークで印象に残る人物ばかり。これと同様に、ティム・バートン監督の『ビッグ・フィッシュ』(03)は、空想好きの老人が息子に語ってきた“冒険”がビジュアル化され、個性的な人々との出会いがドラマをおもしろくした。『アイ・アム まきもと』の結末には本作と共通する要素もあるので、ぜひ、その目で確認してみてほしい。

自分の人生をおとぎ話のように語る父とその息子の絆を綴った『ビッグ・フィッシュ』
自分の人生をおとぎ話のように語る父とその息子の絆を綴った『ビッグ・フィッシュ』[c]Everett Collection/AFLO

“旅”はまた、人々に新たな発見をさせる教科書でもある。『レインマン』(88)でトム・クルーズ扮する自分勝手な青年が、ダスティン・ホフマンが演じた自閉症の兄との6日間の旅を通して変化していく姿は例に出すまでもないだろう。クルーズ演じる若き青年に比べれば牧本は中年で、成長の伸びしろの大きさという点では及ばないだろう。それでも、彼の旅は見識をより広げるものとなる。出会った人たちから聞く蕪木の人柄は乱暴者で、お世辞にも好かれているとは言い難い。しかし、好奇心旺盛な牧本はその過去をさらに掘り下げ、蕪木が実は正義感が強く気持ちの優しい人間だったことを知っていくのだ。謎に包まれた故人の人物像が、牧本の旅を通じて露わになっていく。

自由奔放な弟は父の遺産を手に入れようと、遺産を相続されたサヴァン症候群の兄を施設から連れだす『レインマン』
自由奔放な弟は父の遺産を手に入れようと、遺産を相続されたサヴァン症候群の兄を施設から連れだす『レインマン』[c]Everett Collection/AFLO

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