『ダウントン・アビー』脚本・原案ジュリアン・フェローズが読者の質問に次々回答!ファンに愛される登場人物の”その後”まで激白
ジュリアン先生の作品は、多くの登場人物がその場の出来事に複雑に絡み合っていますが、アイデアが浮かんだ時はどのようにしてまとめていますか? また、脚本を書かれる時のルーティンなどがあればぜひ知りたいです!(20代・女性)
実は、私は体系化が上手なキャラではないんです。ライターチームとの作業ルームがありますが、そこにアイデアやあらすじを書いたポストイットをペタペタ貼っていくというような手法はとっていませんね。特にこの作品は登場人物が多い物語ですが、それぞれの物語を一つ一つ動かすわけにはいきませんからね。登場人物を組み合わせて物語を作ることが必要になってきます。
そして、私にとって重要なのは、物語の鍵となる最初のシノプシスです。脚本はプロデューサーに見せて、彼らのリクエストを聞き、OKが出るまで練り込んでいます。物語は作っていくうちにどんどんと変化していくものですが、その骨子となる最初のシノプシスが揺るぎないものでないと不安になるものですからね。
人生の課題に直面する勇気が出ない時、「ダウントン・アビー」を見返しています。女性たちのたくましさにどれだけ励まされることか…私は、長女で、メアリーの性格にとてもリアリティを感じます。登場人物達のモデルになっている人は、いらっしゃいますか?(50代・女性)
はい。誰か1人を特定はしませんが、現実に生きている人物に影響されていますし、時には要素を取り入れることもあります。この作品の基本的なストーリーは、大きい土地を持つ一族の女性たちが中心です。彼女たちは、自分の生きる世界ではないところから来た人々から、あらゆることを学んでいますよね。そして、彼女たちはその学びによって新たな責任を負うことになります。これは実は、私の友人の実際のエピソードから着想を得たものでした。
例えば、メアリーの亡夫、マシューは中産階級の感覚を持った貴族で、ダウントンにおいてはアウトサイダーです。彼の知的感覚、科学的見地はメアリーに大きな影響を与えます。また、コーラもアメリカ人でダウントンの人々にとってはアウトサイダーですね。こういう2人の部外者は、ダウントンでの当たり前に疑問を呈する役割として登場し、ダウントンの内外をつなぎ、互いに受け入れるようになる役割を担ったんです。
私たち作家は常にこういうネタに目を光らせてるんですよ。まるでそれはリスのようなもので、気になるプロットやストーリーをみつけたら、ほっぺの袋に隠しておいて、必要な時に取り出してるんです(笑)。
取材・文/よしひろまさみち