芥川賞作家・中村文則が語る、“小説”と“脚本”の親和性。「京都国際映画祭」での特集上映を迎えた心境は?
「僕は小説家なので、人間の内面を最も深く掘り下げることができるのは、小説だと思っています。それを映画でやるというのはとても難しいこと。でもいつもすばらしい役者さんたちが見事に表現してくれるので、映画が始まるとすぐに惹き込まれて、自分が書いた小説が基になっていることを意識しないで観客として見入ってしまう。映画化されるたび、驚かされることばかりです」。
2005年に「土の中の子供」で第133回芥川龍之介賞を受賞し、2014年にはノワール小説作家に贈られるアメリカの文学賞「デイビッド・グーディス賞」を日本人として初めて受賞するなど、国内外で高い評価を集める小説家の中村文則。
今年で小説家デビューから20周年という節目を迎える中村。10月15日(土)から開催される「京都国際映画祭2022」で自身の著作を原作とした映画6作品が一挙に上映されるにあたり、「気楽に観られるタイプの映画ではないですが、とてもありがたいことだと思っています」と喜びを語りながら、“映画”と“小説”、そして“脚本”というそれぞれ異なる表現について想いをめぐらせていく。
「原作者としてではなく、いち観客の立場で観ています」
「紙に言葉で書いたものが、映像として動く。それはやはり何度観ても新鮮で、とても不思議な気持ちにさせられます」。中村の手掛ける小説といえば、ダークで鬱屈とした世界観のなかで主人公の心情が克明につづられながら、卓越した文章表現で人間の暗部へと切り込んでいく、まさに純文学を地で行くような作風が特徴の一つとして挙げられる。決して映画化しやすいタイプとはいえないだろう。中村もまた「映画と小説は別の物ですから」と言い切る。
「映画化のオファーをもらう時に、こういうものを作りたいという企画書をいただくんです。そこに書かれたプロットを読んで、この人は小説の一番大事なところを捉えてくれている、と感じることができたものを、許可させていただいています。脚本が出来上がった段階で、『こうした方がおもしろいかもしれませんね』とアイデアを出すことはあります。でもそれは原作者として、という面もありますが、いち観客の立場として言うようにしています。当然ですが、映画には、映画ならではの良さ、素晴らしさがありますから」。
日程:10月15日(土)~16日(日)
場所:よしと祇園花月、ヒューリックホール京都、京都市京セラ美術館、六角堂・池坊ビル、京都大学防災研究所ほか
※10月14日より先行上映開始
※先行しての企画・オンライン上映・展示あり
URL:https://kiff.kyoto.jp/
■小説家中村文則原作映画特集
『銃』『去年の冬、きみと別れ』:ヒューリックホール京都で上映
『銃2020』『火Hee』『悪と仮面のルール』『最後の命』:10月16日(日)23:59までオンライン上映