「仮面ライダーBLACK SUN」は、普遍的な“人間”を描く直球エンタメだ!話題作を“白石和彌ワールド”から解説
『凪待ち』『彼女がその名を知らない鳥たち』と呼応する、奥深いキャラクター像
暴力的な取り立てなど裏家業でその日暮らしをしていた光太郎は、14歳の少女を殺す案件を請けたことからヒーローとして覚醒していく。社会から距離を置き、金のためならなんでもする——そんな光太郎の姿と重なるのが、『凪待ち』(18)の郁男(香取慎吾)である。定職に就かずギャンブルと酒に明け暮れていた郁男は、同棲中のシングルマザー、亜弓(西田尚美)の故郷である宮城県石巻市で人生の再スタートを切った。周囲の人々に支えられ平穏な日々を取り戻したように思えた郁男だが、またもギャンブルにのめり込み、取り返しのつかない“事件”を引き起こす。喪失感を乗り越えようとする郁男のキャラクター性は、いわば光太郎のプロトタイプ。あらゆることから目を背け、墜ちきった男の復活劇には、誰もが心打たれることだろう。
このように、ヒーローとはほど遠い佇まいで登場するブラックサン=光太郎。その多面的なキャラクター造形はいかにも白石監督らしいが、“異色ヒーロー”の最右翼といえば『彼女がその名を知らない鳥たち』(17)の陣治(阿部サダヲ)ではないだろうか。かつての恋人、黒崎(竹野内豊)を思い続ける15歳年下の十和子(蒼井優)と暮らす陣治。彼は十和子に罵倒されても、妻子持ちの水島(松坂桃李)と浮気をしても「十和子を幸せにできるのは僕だけ」と献身的な愛を注ぎ続けていく。命懸けで彼女を守るその歪んだ愛は悲劇へと突き進んでいくが、その先に迎えるラストシーンは、まさに“ヒーロー誕生”のカタルシスに満ちている。建築現場で働く陣治はいつも汚れた作業着を着ているが、その背中に抱えた苦悩や孤独感は、光太郎の寂しげな眼差しと重なって見える。
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