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「仮面ライダーBLACK SUN」は、普遍的な“人間”を描く直球エンタメだ!話題作を“白石和彌ワールド”から解説

コラム

「仮面ライダーBLACK SUN」は、普遍的な“人間”を描く直球エンタメだ!話題作を“白石和彌ワールド”から解説

『凶悪』に代表される、我々の倫理観への問いかけ

剣歯虎の姿をした怪人、バラオム
剣歯虎の姿をした怪人、バラオム[c]⽯森プロ・東映 [c]「仮⾯ライダーBLACK SUN」PROJECT

本作に登場する怪人たちは、人間と野生生物のハイブリット。普段は人間の姿をして暮らしているが、自分の意思や感情が振り切れた時に怪人の姿に変わってしまうという特性が描かれている。複雑な内面を持つ人間のメタファーでもある怪人が想起させるのが、白石監督の長編商業デビュー作となった『凶悪』だ。獄中の死刑囚の須藤(ピエール瀧)は、雑誌記者の藤井(山田孝之)に発覚していない3件の殺人事件を告白。しかも首謀者は別にいると言われ、藤井は不動産ブローカーの木村(リリー・フランキー)を独自に調査していく。気さくで人当たりがよいが金のためなら容赦なく人を殺めていく木村、情に厚いが一度キレると見境なく暴れだす須藤。そして、真実を求め木村を追う藤井ですら、社会正義を盾にした歪んだ一面が顔を出していく。

このように、社会が規範とみなしている倫理観など、様々な価値観に疑問を投げかけていくスタイルは、まさに白石作品の真骨頂だが、「仮面ライダーBLACK SUN」では、怪人と人間の対立を描くことで、どのような一面があぶり出されていくのだろうか。

直球エンタテインメントとして完成した、新たな“白石ワールド”

怪人たちは、マイノリティに対する心ない差別に苦しみながらの生活を強いられている
怪人たちは、マイノリティに対する心ない差別に苦しみながらの生活を強いられている[c]⽯森プロ・東映 [c]「仮⾯ライダーBLACK SUN」PROJECT


本作で怪人を生みだす“悪の組織”は、総理大臣の堂波真一(ルー大柴)率いるゴルゴム党。そんなところにも、反骨の巨匠、若松孝二監督に師事した白石監督らしい体制や権力に対する姿勢が見て取れる。また、脚本に『凶悪』の共同脚本を務め、昨年は『東京リベンジャーズ』(21)のヒットが記憶に新しい高橋泉、美術にはキャリア半世紀を数える邦画界の重鎮であり、多くの白石作品にも参加してきた今村力という、白石監督からの信頼も篤いスタッフが参加。本作のテーマを“怪人たちの群像劇”とコメントした高橋が全10話で紡ぎだす重層的な世界観と、カメラに映らない細部まで徹底した作り込みを行うことで知られる今村が、その世界観をどう具現化しているのか。ぜひ画面の隅々まで目を凝らして見てほしい。

キャラクター誕生から半世紀。意欲的な布陣で新たな「仮面ライダー」の創造という難題に挑んだ「仮面ライダーBLACK SUN」。そこには、白石監督がこれまで取り組んできた、社会や人間の暗部からも目を背けないという創作姿勢が確固として息づいている。このように本作の本質は決して奇をてらった変化球ではなく、時代を反映しながらも普遍的な人間の有り様に迫る、直球のエンタテインメントなのだ。

文/神武団四郎


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