『MEN 同じ顔の男たち』アレックス・ガーランド監督が来日!「日本は“匠”を感じさせる国」
秋葉原UDXシアターにて11月29日、『MEN 同じ顔の男たち』(12月9日公開)の舞台挨拶付き試写会が開催され、来日したアレックス・ガーランド監督が、作品を見た観客からの質問に直接回答した。
本作は、『ミッドサマー』(19)、『ヘレディタリー/継承』(18)など、クオリティの高い映画製作に定評のあるアメリカの配給会社「A24」と、監督作『エクス・マキナ』(15)がアカデミー賞視覚効果賞を受賞したアレックス・ガーランド監督が究極のタッグを組んだ映画。夫の死を目撃してしまった女性が心の傷を癒すため、自然あふれる美しいイギリスの田舎街を訪れるのだが、そこで現れる男たちが全員、同じ顔をしている…という不気味な物語となっている。主演は、『ロスト・ドーター』(21)でアカデミー賞助演女優賞へノミネートを果たした注目女優ジェシー・バックリー。
イベントでは、ガーランド監督に対し「男性である監督が、題材としてトキシックマスキュリニティ(男は男らしくすべきという有害な男性性)に取り組まれたことについて、なにか狙いや想いがあるのか」という質問が繰り出された。
すると、「大きな質問なので、はっきりとした答えは申し上げられないのですが…」とガーランド監督。「シンプルな答えは提示できませんが、トキシックマスキュリニティは昔からあったこと。母や父も話題にしていたであろうと。ただ、いろいろ議論されている割には、社会で大きな変化は起きていないなと僕は思う。女性が声を上げるのは大事だと思うが、男性も同様にこの議論に参加することが大事なのだろうと思います」と、真摯に答えた。
また、「ガーランド監督のすばらしい映像では、いつも美しい自然が描かれているが、自然を作品に取り入れる意図はなにか」との質問が飛んだ。これには、「人が映画を作るときにはざっくり2つのアプローチがあると思う」と切りだす。
「1つは、自分が若いときに大好きだった物語を繰り返し語っていくフィルムメーカー。もう1つのアプローチは、いま世の中で起こっていることにひたすらリアクションして映画作りをしていくタイプ。僕は2つ目の方。それで、なぜ作品に自然が取り込まれているかというと、単純に自然が大好きだから。生活の一部なので、それが映画にも反映されているということなんです」と回答し、「僕の映画はシュールレアリスムな側面があると思うのですが、実際、現実はどんなシュールレアリスム映画よりも一番奇妙だと思う。僕はそのシュールさをなるべくベストな形で描きたいんです」と語っていた。
ちなみにガーランド監督は、日本について「何度か訪れていて大好き。とにかく想像力あふれる文化で、いつも目を見張るばかり。文化的に唯一無二感がある。日本と言えば…で連想する言葉は『匠』。絵画にしても陶芸にしてもアニメにしても映画にしても匠を感じさせる国だと思う」と絶賛していた。
取材・文/平井あゆみ