「生きることを考えさせられた」「涙なしでは観られなかった」フランソワ・オゾン監督が見つめたリアルな“安楽死”を、あなたはどう捉える? - 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「生きることを考えさせられた」「涙なしでは観られなかった」フランソワ・オゾン監督が見つめたリアルな“安楽死”を、あなたはどう捉える?

コラム

「生きることを考えさせられた」「涙なしでは観られなかった」フランソワ・オゾン監督が見つめたリアルな“安楽死”を、あなたはどう捉える?

控えめだが熱量を帯びた名優たちの演技は圧巻のひと言

複雑な感情を深みのある繊細な演技で魅せるソフィー・マルソー
複雑な感情を深みのある繊細な演技で魅せるソフィー・マルソー[c]2020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES

深刻なテーマを扱う本作にリアリティをもたらしているのが、実力派俳優たちの名演が浮かび上がらせるキャラクター。「父と娘(長女)の関係。どちらの視点、気持ちも痛いほど共感できた」(30代・男性)との感想にあるように、キャラクターが抱く複雑な感情が控えめながらも浮き彫りにされていく。

ソフィー・マルソーの美しさに圧倒された」(40代・女性)など、特に印象に残ったという声が多かったのが、マルソー演じる主人公で長女のエマニュエルだ。時には感情を爆発させながらも父の意思を汲んで、気丈に振る舞い手続きを進めていく姿に深い愛情を感じ取った人も多かったようだ。

「父の死を望んでないことは明白ではあるが、一方で自分の意思よりも父本人の意思を尊重している姿がすてきだった」(30代・男性)
「子どものころの回想シーンでは決して子どもにとっていい父親ではなかったのに、エマニュエルは深い愛情を感じて父親の意思を尊重し、いろんな問題をクリアにして行動に移していた。本当は生きてほしいという、彼女の気持ちや願いがわかって涙が出た」(50代・女性)


また、父の決意に対する葛藤や苦い過去の関係、それでも父に抱く愛情まで、心の機微を顔つきや言葉の端々で漂わせたマルソーの繊細な演技には、「感情を控えめにしていることで、より苦悩と父親への愛情の深さをうまく表現していた」(50代・女性)などの好意的なコメントも散見された。

頑固だけどどこか憎めない父をアンドレ・デュソリエが演じている
頑固だけどどこか憎めない父をアンドレ・デュソリエが演じている[c]2020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES

そのマルソーに並ぶ存在感を発揮していたのが、父アンドレをユーモア交じりに演じたアンドレ・デュソリエ「お父さんのキャラクターがチャーミング」(40代・女性)とあるように、とにかくわがままで頑固、思ったことをズバズバと口にするデリカシーのない性格の持ち主だが、それでいてどこか憎めない魅力を放っている。

「表情やしゃべり方について、少しずつ(症状が)回復しているように見せる演技が上手かった」(40代・男性)
「病気を発症した直後はまさに病人の”顔”で右半分の麻痺をリアルに表現していて、ラストに向かって死という希望を持ったことで病人とは思えないような普通の表情に変化するのがすごかった」(30代・女性)


とあるように、脳卒中によって身体が麻痺してしまった病状やそこから少しずつ回復していく様子を、表情や口調の変化で丁寧に表現した芝居は圧巻だ。

また、ジェラルディン・ペラスが演じた妹パスカルは、「頑固な父親に寄り添う姉妹の対比がよかった」(20代・男性)「自分に一番近いと感じた。エマニュエルは強く、パスカルは人間の弱さを感じる」(20代・女性)など、姉とひと味異なるキャラクターとして物語に深みを与えている。

オゾン作品の常連である大女優シャーロット・ランプリングはうつ病を患う母クロードを演じており、「感情表現がとても人間らしかった」(30代・男性)「冷たい態度のなかにも家族への愛情を感じる場面があった」(30代・男性)と、出演時間はあまり多くないものの随所での輝きに目を奪われた人も多かったようだ。

リアルなシーンの数々に感情を揺さぶられる人も…

そんな名優たちのアンサンブルによって紡ぎだされるリアルで説得力のあるシーンの数々。そのなかでも、アンドレがエマニュエルに投げかけた数々の言葉には多くの声が寄せられており、観客の印象に残ったようだ。

例えば、物語を大きく動かす「(人生を)終わりにしてほしい」と懇願する言葉には「絶対に聴きたくないひと言」(50代・男性)「生きることについて考えさせられました」(30歳・男性)といった意見が、「生きるのと延命は違う」という言葉には「自分の母親が亡くなる時に実感した」(50代・男性)「身体が自分の思いどおりにならないながらも生かされるのは、すごくつらいだろうと感じた」(20代・女性)とのコメントが寄せられた。

【写真を見る】“死”という希望が見えたことで、徐々に回復して表情が明るくなっていく父…
【写真を見る】“死”という希望が見えたことで、徐々に回復して表情が明るくなっていく父…[c]2020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES

中盤では、安楽死への道が開け、残りの日々を楽しむアンドレの様子が描かれていく。エマニュエルと夫セルジュ(エリック・カラヴァカ)、アンドレの3人がレストランで食事をするシーンは、幸せそうなアンドレとは裏腹に、残されたタイムリミットが刻一刻と迫るせつないひと幕だ。

「いままで泣かなかった主人公が泣いていた」(30代・女性)
「アンドレのひと言ひと言がエマニュエルに刺さっていくのがよく見えた」(30代・男性)


それまで気丈に振る舞っていたエマニュエルの感情が抑えきれなくなる様子は、観る者に割り切れない感情を覚えさせるシーンとして焼きついたよう。そして、フランスでは禁止されているため、安楽死が認められているスイスへ向かおうとするアンドレ。だが、警察に通報されれば中止にせざるを得ないだけでなく、エマニュエルたちが自殺ほう助の罪で逮捕される恐れもあった。家族の付き添いもなく一人で旅立つアンドレと姉妹の別れのシーンには、淡々としたリアルなトーンに感情を揺さぶられた人もいたようで、下記のような言葉が並んだ。


「それぞれの想いが伝わってきて、涙なしでは観られなかった」(20代・女性)
「きっと伝えたいこと、話したいことはたくさんあるはずなのに、いざあの状況で話すことがあるとするなら、多くは語らず、あのくらいの言葉と時間なんだろうなと妙にリアルだった」(30代・女性)

関連作品