【連載】「MINAMOの話をきいてミナモ?」最終回 私が歩いてきた道

コラム

【連載】「MINAMOの話をきいてミナモ?」最終回 私が歩いてきた道


周りに支えてくれる人が増え、私も守りたいと思う人が増えた

AVの仕事を始めて幸せを感じたMINAMO
AVの仕事を始めて幸せを感じたMINAMO撮影/SAEKA SHIMADA ヘアメイク/上野知香

一人暮らしを始めて、私は自分がどれだけできない人間だったのかということに気づかされた。その後、正式に病院で診断を受けた。先生に「けっこう頑張って生きてきたんじゃないですか」と言われた時、私は言葉がつまって出てこなかった。何度も何度も自分を責め、私なりにたくさん考えてきたことは、無駄ではなかった。

やがて大人になり、知りたくなかった感情や理不尽な痛みの槍が飛んできて、私の心が死んだ。心が死ぬのはこんなに一瞬にして死んでしまうのだと私は思った。狭い土地に嫌気が差して、飛び出してきた東京は広いようでやっぱり狭かった。毎日のように欲望の渦に埋もれながら「なにになりたいの?」「どうしたいの?」という質問に答えられず、私は疲弊した。自分のことが分からなくて、目をパンパンに腫らしして、泣きながら渋谷を歩いた。そこでは自分と歳の変わらない子たちが今を全力で駆け抜けていた。

AV女優になって、本当に良かったのかと不安に思い、悩む時はたくさんあった。それでも私はやはりエロいものが好きで、AVの世界が好きで。エロいものを楽しむのに男も女も関係無いのだと言いたかったのだ。人の生まれる根底にあるもので勝負し、衣装は自分の裸体だ。

今まで生きてきて「おかしい人」だった私は、AV業界では「面白い人」と言われるようになった。それだけで、私は救われた。

たくさんの発見や気づきがあったAV現場からの帰り道、高速道路を走る車に揺られながら私は幸福感に包まれる。孤独な時間は長かったけど、私は自分の繊細さで今仕事を得ているのだ。ちょっと面倒だけれど、今だに爪はむいてしまうけれど、こんな自分でよかったと、生きててよかったと、そう思う。私はずっと、幸せになりたかった。人生が壮絶だったかといえば、そんなことはない。ただ少し生きるのがつらかっただけで。

私は自分の正体がなにか、これまでずっと考えてきた。どんな人間なのか、どんなことを考えているのか、今回改めて振り返ってみたが、自分のことをわかっているようであまりわかっていなかったのだ。だが、私は思った。そこに気づいていれば可能性はまだまだあるということに。自分のことをわかった気でいないほうが良いということに。

私は今、幸せに生きている。大切な家族がいて、多くはないけど友達もいて、大きく息を吸うことだってできる。自分を恥じることもない。私を「支える」と言ってくれる人がいつのまにか周りに増えた。そして、私も「守りたい」と思う人がたくさん増えたのだ。

■MINAMO プロフィール
京都府出身。2021年6月にSOFT ON DEMANDよりAV女優としてデビュー。趣味は映画&レコード鑑賞、読書。
YouTubeにて「MINAMOジャンクション」を配信中。
Twitter:@M_I_N_A_M_O_
Instaglam:minamo_j


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