「LOTR」「GOT」から『聖闘士星矢』へ…ショーン・ビーンが振り返る、自身のキャリア
「登場人物に栄光をもたらす一方、罰も与えるところがギリシャ神話のおもしろさ」
ビーンの口から何度も発せられる“ギリシャ神話”というワード。「子どもの頃からギリシャ神話に魅せられてきた」と語るように、彼自身も強い影響を受けてきたテーマのようだ。ビーンは過去に、ブラッド・ピット主演の『トロイ』(04)やゼウス神を演じた『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』(10)など、ギリシャ神話を題材にした作品にも出演している。
「英雄たちの戦いを描くところがギリシャ神話のおもしろさではあるのですが、とりわけ私が興味深いと感じているのがその奇妙さですね。登場人物に栄光をもたらす一方で、時に重い罰を与えることもあるからです。たしかに、『トロイ』や『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』に出演した経験は、本作にも生かされていると思います。ヒーローであり、戦士でもある英雄や神々を私自身の体で肉体的に体現した経験があったことで、アルマンも楽しく演じることができました」。
ところで、これらの作品ではアーマーを身に着けていたビーン。本作で聖衣(クロス)を装着する星矢たちを見て、自身も着てみたいと思ったか?と聞いてみると、「それはなかったです(笑)」と笑顔に。「私はテーラーのスーツを着ているほうが快適なんですよ。なので、ずっとスーツを着ていられてよかったです」とのこと。今回の取材中、撮影とインタビューの合間にはティータイムを嗜んでもおり、出演作の多くで見せてきたシリアスさとは異なり、ビーン本人はどこか親しみやすさも感じさせる英国紳士であることを知ることができた。
「『ロード・オブ・ザ・リング』のボロミアは、完璧な善人ではなかった」
星矢を戦いに引き込み、過酷な修行も強いるなど目的を果たすためには手段を厭わないアルマンの姿勢は、ある意味でエゴイストに映るだろう。その一方で、自身の命をシエナに捧げることに躊躇しないなど、尋常じゃない責任感の強さも感じさせる。そういった複雑なキャラクターは、ビーンが過去に演じてきた「ロード・オブ・ザ・リング」のボロミアや「ゲーム・オブ・スローンズ」のエダード “ネッド” スタークにも通じる。
「『ロード・オブ・ザ・リング』におけるボロミアは完璧な善人というわけではなかったのですが、基本的には良い人間であり、勇敢な戦士でしたね。アルマンは限られた命を持った人間であり、シエナが持つ力の大きさも理解しています。彼の目的はやがて女神として覚醒する彼女を守ることで、それが生きる意味であり、そこに幸せも感じています。彼にはビジネスマンとして成功する以前に果たしたかった人生の意義があり、現在はそのすべてをシエナに費やしているんです」。
ちなみに、東映アニメーションのプロデューサー、池澤良幸はビーンにアルマン役をオファーした際に「この役は『スター・ウォーズ』のオビ=ワン・ケノービのような立ち位置」と説明していたそう。そのことを覚えているか?と聞いてみると、「ちょっと覚えていないのですが…」と苦笑いするビーン。
「オビ=ワン・ケノービはすばらしいキャラクターですし、彼とアルマンが並べられることは光栄なことです。たしかに似た面も感じるのですが、それを覚えていたらおそらく、異なるアプローチで演じていたと思いますよ(笑)」。