『聖闘士星矢』は“実写化”の不安を吹き飛ばせたのか?ユーザーの感想から、リスペクト度を読み解く
新田真剣佑がハリウッド映画初主演を飾った『聖闘士星矢 The Beginning』(公開中)。日本で生まれた人気コミックをハリウッドで実写映画化するということで、製作発表時から期待と不安が入り混じった声が数多く見受けられてきた本作は、実際のところ“アリ”だったのか?
作品公式Twitterが呼びかけたハッシュタグ「#実写聖闘士星矢見た」に投稿された感想と、MOVIE WALKER PRESSのレビューページに寄せられたコメントから、作品を鑑賞したユーザーたちの声を紹介していきたい。
「週刊少年ジャンプ」で1980年代後半より連載された車田正美の「聖闘士星矢」は、1986年に放送がスタートしたテレビアニメ版と共に国境を超えて人気を獲得。シリーズ累計発行部数は5000万部を突破しており、これまでもゲームソフトやSMAPが主演を務めた舞台版など様々なメディアミックスがされてきた。そして今回、初めてとなる実写化がハリウッドで活躍するスタッフ、キャストによって実現したとなれば興味は尽きない。
幼いころに姉と生き別れになった星矢(新田)は、姉を探しながらスラム街の地下格闘技で生計を立てていた。そんなある日、アルマン・キド(ショーン・ビーン)と名乗る男が現れ、女神アテナの生まれ変わりであるシエナ(マディソン・アイズマン)を守ることが使命であると告げられる。戸惑いながらも自ら運命を決断し、厳しい修行に励んでいく星矢。しかしシエナを狙うグラード(ファムケ・ヤンセン)の魔の手が襲い掛かることに。
ハリウッド実写版『聖闘士星矢』は“アリ”だった?
「ドラゴンボール」「マッハGoGoGo」「銃夢」「攻殻機動隊」など、これまでハリウッドで実写映画化された日本発のコミック、アニメ原作作品は多々あれど、オリジナルのファンに歓迎された作品はそれほど多くないのも事実だ。ハリウッドの映像技術をもってしても、文化的な違いやキャラクターイメージのギャップもあり、原作へのリスペクトとハリウッドらしいスケール感を融合させることは容易ではない。
本作を鑑賞した観客の感想を見ていると、特に原作ファンのなかには不安を抱えながら観に行ったユーザーが多くいることが窺える。しかしながら、そのようなユーザーから多く寄せられていたのは「思ったよりいける」といった、いい意味で予想を裏切られたという声だ。
「日本原作のハリウッド化って不安要素が多けど、払拭してくれた!」
「名前だけ一緒の全く別物になるんじゃないか…と公開前は心配もありました。が、実際観てみると杞憂でした!」
「あの世界観をどう実写にするの?と興味本位で見に行きましたが、予想を超え、まるで見ている自分自身まで小宇宙を体感している気分になりました」
こうした声が多く飛びだした最大の理由はどこにあるのか。新田はMOVIE WALKER PRESSのインタビューのなかで、アクションチームのスタッフと話し合いを重ねながら“星矢らしい”アクションを作り上げていくことに注力したと語っていたが、実際に鑑賞するとアクションシーンこそが本作の要であることがわかる。“ハリウッドらしさ”よりも“星矢らしさ”を追求したことが、アクションを含めた本作全体の印象を大きく向上させているのではないだろうか。
そしてもちろん、「聖闘士星矢」で重要なのは徹底的に作り込まれた世界観と、物語の奥深さ。原作ファンからは「聖闘士星矢は鎧を着た少年が世界を救うスーパーヒーロー物……ではない。運命に翻弄された少年と少女がその運命に立ち向かい、出会いと別れを繰り返し愛と平和のために戦う悲劇の物語なのだ。そこをフォーカスしている今作をファンの一人として評価したい」という熱の入った感想が、本作が原作のテーマ性に敬意を払った作品になっていることを言い表している。