バットマンと共闘で話題のフラッシュは実は“2代目”って知ってる?地上最速のヒーローの歴史をたどる!
予習するなら2つの『ジャスティス・リーグ』を観るべし!
『ジャスティス・リーグ』(17)はフラッシュが劇場映画に本格的に進出した記念すべき作品だ。本作に登場するのは、大学生のバリー・アレン(ミラー)。妻殺しの冤罪で収監された父の無実を晴らすため刑事司法の勉強をしている少年で、宇宙からの脅威に対抗するためバットマン(ベン・アフレック)にジャスティス・リーグに誘われる。ヒーローとしてはまだかけ出しで、その能力については雷に打たれたという程度の説明のみ。バトルシーンでも先輩ヒーローのサポートや人々を避難させる姿の方が印象的だった。空気が読めず軽口ばかり叩くルーキーだが、深刻な顔をしたメンバーのなかでムードメーカーとして存在感を放っていた。
本作でデビューしたフラッシュは、DCユニバース(当時はDCエクステンデッド・ユニバース)として先に製作された2本の映画にカメオ的に出演していた。『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(16)には汚れた姿で未来から登場。「ロイス・レインが鍵になる」とバットマン/ブルース・ウェインにメッセージを伝えた。『スーサイド・スクワッド』(16)ではキャプテン・ブーメラン(ジェイ・コートニー)の経歴紹介シーンで、ダイヤ強盗中のブーメランを捕獲する。出番は一瞬だが「平気で仲間を裏切っちゃうんだ」と軽口を叩く姿がいかにもバリーらしい。『ジャスティス・リーグ』以降では、DCユニバースのドラマ「ピースメイカー」(22)シーズン1の最終回にジャスティス・リーグのメンバーと共に顔を出している。
『ジャスティス・リーグ』は、のちにディレクターズカットというべき『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』版がリリースされた。本作では劇場公開版では使われたストーリーやキャラクターのバックグラウンドが大幅に補充され、フラッシュの登場シーンも増えている。劇場公開版では人付き合いに不慣れなオタク少年という趣だったが、ザック版では交通事故から女性を救うシーンの追加によってバリーの優しい一面をにじませた。彼が救ったのは映画『ザ・フラッシュ』で重要な役割を担う大学時代の同級生アイリス・ウェスト(キーアージー・クレモンズ)で、このシーンは単独主演作への伏線でもあったのだ。コミックや14年版ドラマでは恋人で妻になるアイリスだが、映画ではこれが初対面。ウェストに見とれるバリーを超スローモーションで捉えた幻想的な映像と、バックに流れる名曲「ソング・トゥ・ザ・サイレン」が相まってロマンチックな名シーンになっている。予習にはザック版がお薦めだが、公開版にはミッドクレジットシーンとしてザック版にはない“フラッシュVSスーパーマン”が収められているので、こちらもチェックしてほしい。
ほかにもフラッシュは、『DC がんばれ!スーパーペット』(22)をはじめとする数々のアニメーションにも登場し、オタク青年たちの日々を描いたシットコム「ビッグバン★セオリー」(07〜19)でも何度もネタになっている。日本ではバットマンやスーパーマン、ワンダーウーマンに比べ知名度は低いが、本国では根強い人気を誇るヒーローなのだ。
初の主演実写映画『ザ・フラッシュ』では、その能力をフルに使って大活躍するフラッシュ。バットマンやスーパーガール(サッシャ・カジェ)と手を組みゾッド将軍(マイケル・シャノン)に立ち向かうスペクタクルはもちろん、母親や父親への強い愛から時空をねじまげてしまった青年の心のドラマとしても見ごたえある作品に仕上がった。速いだけじゃない、愛すべきヒーロー、フラッシュ/バリー・アレンの魅力の詰まった1本だ。
文/神武団四郎