マイケル・キートンも伝説のバットモービルも『ザ・フラッシュ』でカムバック!歴代バットマンを総ざらい
ティム・バートンが外見を変え、クリストファー・ノーランがリアル志向をもたらす
ティム・バートン監督の『バットマン』には、コスチュームに対する概念を変えたという功績もある。バットスーツのデザインを担当した一人、ボブ・リングウッドはデイヴィッド・リンチ監督作『デューン 砂の惑星』(84)でスティルスーツをデザインした人物。アダム・ウェストが演じたテレビシリーズのバットマンは全身タイツのようなデザインだったが、リングウッドは強靭なデザインにすることを提案。黒を基調にしながらハードで筋肉を想起させるという、その後の作品で踏襲される洗練されたデザインの源流になっている。『バットマン』は大ヒットを記録。キートンは第2作『バットマン リターンズ』(92)でもバットマン役を演じたが、バートン監督が第3作『バットマン・フォーエヴァー』(95)の監督を降板してプロデューサーに回ったことで、キートンもバットマン役を降板している。それゆえ『ザ・フラッシュ』では、約30年ぶりにバットマン役を演じていることになる。
第3作『バットマン・フォーエヴァー』ではヴァル・キルマー、第4作『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』(97)ではジョージ・クルーニーがバットマン役を演じたが、クリストファー・ノーラン監督の『バットマン ビギンズ』(05)、『ダークナイト』(08)、『ダークナイト ライジング』(12)の“ダークナイト・トリロジー”でクリスチャン・ベールがバットマン役を演じたのを経て、「バットマン」の表現はリアル志向へと変化してゆく。ロバート・パティンソンがバットマン役を演じた『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(22)は、私たちの暮らす世界と地続きであるかのように思わせる、まさにリアルな設定が魅力の作品だった。特筆すべきは、バットマンが運転するバットモービルのデザイン。これまでも、製作された時代や作品によってデザインは変更されてきたが、この映画では1960年代後半から1970年代にかけて製造されたアメリカのマッスル・カーのような意匠が施されていた。
『ザ・フラッシュ』には、“あの”バットモービルが驚きの登場を果たす。そして、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』や『ジャスティス・リーグ』でバットマン役を演じたベン・アフレックも、フラッシュの友人として登場する。つまり、マイケル・キートン演じるもう一人のバットマンが、フラッシュとどのような相関関係を結んでいくのかも注目ポイントなのである。マイケル・キートンがコスチュームを身にまとった勇姿を『ザ・フラッシュ』で拝めることに対する歓びもある。DCユニバースを総括させ、予想もしない感動が待ち受けている今作が、DC映画を代表する作品になることに異論はないだろう。
文/松崎健夫